ﾌﾚｰﾑ構成 漢詩詞作品集杖下300律詩 雑下巻 中山逍雀漢詩詞創作講座填詞詩余楹聯
杖下三百律詩 雑の部
録５１から１１２まで ６２首
５１−
山居偶感 上平１１眞韵仄起
酒杯詩書常作鄰，春秋冬夏老風塵。
苦吟未了煙霞志，疎懶被譏湖海人。
獨得買山無抑枉，豈知飮水有全眞。
浮生萬事夢中夢，覺後観天景福新。
酒杯詩書、常に鄰を作し、春秋冬夏、風塵に老ゆ。
苦吟未だならず、煙霞の志、疎懶譏られる湖海の人。
獨り山を買い得て抑枉無く、豈に飮水を知りて全眞有り。
浮生萬事、夢中の夢、覺後観天、景福の新。
５２−
山居偶感 下平１先韵平起
綿華舞地凍雲天，雪竹婆娑月露前。
他國三冬行楽絶，歸心半夜客愁煎。
擁爐裁句缺風韻，終日低頭繙蠧篇。
呉下阿蒙忙殺在，懶残不耐枕書眠。
綿華地に舞う凍雲の天、雪竹婆娑たり月露の前。
他國三冬行楽絶え、歸心半夜客愁煎る。
爐を擁し句を裁し風韻は缺け、終日低頭たり蠧篇を繙く。
呉下の阿蒙、忙殺在りて、懶残不耐、書に枕して眠る。
５３−
山居書感 上平１１眞韵仄起
茅屋書燈形影親，於今已古亦蒙塵。
功名念化青春夢，詩酒勳爲白髪身。
自恣半生歌復哭，誰憐大老病兼貧。
任他性業任天命，尚使餘齡蓬轉人。
茅屋の書燈、形影親み、於今已古、亦た蒙塵たり。
功名念は化す青春の夢と、詩酒勳は爲す白髪の身に。
自ら半生を恣にして歌い復た哭き、誰ぞ大老、病と貧を憐まん。
他に任す性業、天命に任すと、尚お餘齡、蓬轉の人使む。
５４−
山居雑感 下平聲７陽韵仄起
閑課無閑寄寓堂，書窓擲筆息望長。
四林落葉残秋色，孤月凭欄留曉光。
此隠青山忘名利，何時白社得賢良。
偶尋碧水漁翁舎，不釣銀魚釣玉觴。
閑課に閑無く寓堂に寄り、書窓の擲筆、息望長し。
四林の葉は落つ残秋の色，孤月は欄に凭りて曉光を留む。
此隠の青山、名利を忘れ、何時にか白社、賢良を得ん。
偶ま碧水を尋ぬ漁翁の舎，銀魚を釣らずして玉觴を釣る。
５５−
山居書懷 下平１１尤韵仄起
羇中低事使人愁，他国寓居三載秋。
倦客思郷時入夢，傷心託酒自掻頭。
風吹緑樹涼纔動，雲返青山月正浮。
非是征途千里遠，家山何處也囘眸。
羇中、低事ぞ人をして愁え使む、他国の寓居、三載の秋。
倦客、郷を思いて夢に入るの時、傷心、酒に託して自ら頭を掻く。
風吹きて緑樹は涼、纔に動き、雲返りて青山は月正に浮ぶ。
是れ征途、千里の遠きに非ず、家山、何の處か也た眸を囘らす。
５６−
山居苦吟 上平１０灰韵仄起
他國閑居紫翠隈，纔堪入膝絶氛埃。
雲松山下澗谿響，璧月天央星斗陪。
毎尚六詩頭白盡，翻迎三友眼青來。
箇中苦楽人知否，朝夕雌黄宵酒杯。
他國の閑居、紫翠の隈、纔堪入膝、氛埃絶える。
雲松山下、澗谿は響き、璧月天央、星斗に陪す。
毎尚六詩、頭白盡き、翻迎三友、眼青來る。
箇中の苦楽、人知るや否や、朝夕雌黄、宵酒の杯。
５７−
山舎値春雪妻兒慮我尋來三月念三 上平１東韵仄起
山舎値春雪，妻兒問我窮。
天晴烟月騁，夜永笑談同。
舊事徒無説，新詩暫罷攻。
何堪今夕喜，廚裡酒肴豊。
山舎、春雪に値い、妻兒、我が窮を問う。
天晴れ烟月騁に、夜永く笑談同じ。
舊事、徒に説く無く、新詩、暫し攻め罷む。
何ぞ堪えん、今夕の喜、廚裡、酒肴は豊なるに。
５８−
閑居自遣 下平１１尤韵平起
琵琶湖北小茅樓，要擬渭川簑笠叟。
半夜敲窓淫雨切，一天無月暗雲流。
此時抱病禁斟酒，何日携竿試釣遊。
故里知音書簡絶，多情多感老孤愁。
琵琶湖の北、小茅樓、擬とす、渭川、簑笠の叟に。
半夜、窓を敲き淫雨は切に、一天、月無くして暗雲は流る。
此時、病を抱きて斟酒の禁、何れの日にか竿を携えて釣遊を試みん。
故里の知音、書簡絶え、多情、多感、老孤の愁い。
５９−
客舎晨去 上平５微韵平起
侍晴早起怕寒威，欲去候亭重垢衣。
先日従娯留意倍，今朝何計倦遊歸。
宿雲漂處罩山紫，曙旭昇時榮水緋。
湯客未期人不見，獨携行李出郊畿。
晴を侍ち早く起き、寒威を怕れ、去と欲す、候亭に垢衣を重ぬ。
先日従りの娯み留意倍し、今朝何んぞ計らん倦遊に歸す。
宿雲、漂う處、山紫罩め、曙旭、昇る時、水緋榮う。
湯客は未だ期せずして人見えず、獨り行李を携えて郊畿に出ず。
６０−
客舎留連 上平４支韵平起
客樓戀戀誤歸期，風吼雲奔昏暮悲。
落木寒村秋盡後，晩山黄葉日斜時。
陶陶熟醉詩将就，脈脈殷愁人不知。
占得狂吟別天地，也挑残燭夜眠遲。
客樓に戀戀として、歸期を誤り、風は吼び雲は奔り昏暮悲し。
落木、寒村、秋盡の後、晩山、黄葉、日斜の時。
陶陶たる熟醉、詩将に就き，脈脈たる殷愁、人知らず。
占め得たり、狂吟、別天地を、也た残燭を挑げて、夜眠る遲し。
６１−
淹留客舎 上平４支平起
淹留客舎失歸期，天晴風寒獨苦思。
落木飄零秋去季，疎星明滅夜來悲。
三更醉夢醒無解，一枕憂愁掃不移。
也對残燈孤坐久，追懐匝日睡遅遅。
客舎に淹留歸期を失い、天は晴れ風は寒く獨り苦思す。
落木は飄零、秋去の季、疎星は明滅、夜來りて悲し。
三更の醉夢、醒めて解せず、一枕の憂愁、掃うて移らず。
也た残燈に對して孤り久しく坐し、追懐、日を匝いて睡り遅遅たり。
６２−
寓居口占 下平聲庚韵仄起
獨楽三冬習俗輕，毎凭胡榻酒頻傾。
誰憐落泊潜郎事，空得狂狷迂叟名。
萬里飄雲齎雨氣，千林失影送寒聲。
醒餘偶上村丘望，不見家山雪嶽横。
獨り三冬を楽しみて、習俗輕く、毎に胡榻に凭りて、酒、頻に傾く。
誰ぞ落泊を憐れまん潜郎の事、空く狂狷を得たる迂叟の名。
萬里、飄雲、雨氣齎れ、千林、失影、寒聲を送る。
醒餘、偶ま上り、村丘を望み、家山は見えずして、雪嶽横わる。
６３−
偶感 下平１先韵平起
胡牀追夢午窓前，吹颯松風過枕邊。
酒克消愁翻缺力，詩因少料未成聯。
苦吟只欲驚人句，酣醉何妨不夜眠。
是此壺中別天地，悠悠獨自吐雲煙。
胡牀に夢を追う午窓の前、松風は吹颯ちて枕邊を過ぐ。
酒は消愁に克ち翻として力を缺き、詩は少料に因りて、未だ聯を成さず。
苦吟は只だ人を驚かす句を欲し、酣醉、何んぞ妨げん夜眠れざるを。
是れ此の壺中、別天地、悠悠として獨り自から雲煙を吐く。
６４−
偶感 上平１１眞韵仄起
樽酒詩書常作隣，春秋冬夏自相親。
吟情未了煙霞志，懶性遭譏湖海人。
此住青山無抑枉，翻縁飲水有全真。
浮生萬事塞翁馬，醒後心天四界新。
樽酒、詩書、常に隣を作し、春秋、冬夏、自ら相い親しむ。
吟情、未だ了らず、煙霞の志、懶性、遭譏、湖海の人。
此、青山に住み抑枉無く、翻、飲水に縁り全真有り。
浮生萬事、塞翁が馬、醒後、心天、四界新なり。
６５−
偶感 上平４支韵平起
茅斎抱膝夜眠遅，古往今來削詠詩。
半世甘貧仍守拙，一心愛籍未移思。
夙欽夫子倣周易，尚泥屈平繙楚辞。
座右寶經何無益，吾生不得値時宜。
茅斎に膝を抱き夜眠る遅く、古往、今來、詠詩を削る。
半世の甘貧、仍を拙を守り、一心の愛籍、未だ思い移らず。
夙欽の夫子、周易に倣い、尚泥の屈平、楚辞を繙す。
座右の寶經、何の益無く、吾生、時宜に値い得ず。
６６−
偶感 上平４支韵仄起
吾道是非唯抱疑，無功有過一書癡。
行遲粉蝶趁花後，勉先昏鴉歸宿時。
霜雪酸寒心欲碎，鬼心撹亂酒難辞。
此身今日詩人否，侭把韋編手自披。
吾道、是非、唯疑を抱き、無功有過、一書癡なり。
行遲の粉蝶、花を趁うの後、勉先の昏鴉、歸宿の時。
霜雪、酸寒として心碎けんと欲し、鬼心、撹亂して酒辞し難し。
此身、今日、詩人なるや否や、韋編を把り侭して、手自から披く。
６７−
偶成 上平７虞韻平起
吟花嘯月日歓娯，弗趁時流守故吾。
天命問天天不語，道心聞道道難圖。
家人未許買山計，野叟敢嘗填海愚。
任他擧世求名利，侭忘残存酒半壺。
花に吟じ月に嘯き日に歓娯、弗趁時流、故吾を守る。
天命を天に問うも、天は語らず、道心道に聞けど道、圖り難し。
家人、未だ許さず、買山の計を、野叟、嘗て敢す海を填むの愚を。
任他擧世、名利を求め、忘れ侭す残存す、半壺の酒を。
６８−
偶成 上平１５刪韵仄起
狂簡猶無奈放頑，獨逃俗世住青山。
戴天夜雨那妨夢，故国春風寧未還。
一穂吟燈催白髪，三年蓬屋作蒼顔。
居諸轉瞬徒加老，詩酒相除終日閑。
狂簡猶お無く放頑を奈せん、獨り俗世を逃れて青山に住む。
戴天の夜雨、那にぞ夢を妨げん、故国の春風、寧んぞ未だ還らず。
一穂の吟燈、白髪を催し、三年、蓬屋、蒼顔を作す。
居諸、轉瞬、徒に老を加え、詩酒、相除して終日、閑かなり。
６９−
偶成 下平１１尤韵平起
華城興廢幾春秋，萬敞媒煙連九旻。
尚古徒追顔子楽，非今未厭伯夷貧。
偏知活気年年減，却喜吟情日日新。
聞道誹吾狂狷者，雖然虚飾縛心身。
華城の興廢、幾春秋、萬敞、媒煙、九旻に連なる。
尚古、徒に追う顔子の楽、非今、未だ厭はず、伯夷の貧。
偏に活気、年年減ずるを知り、却って喜ぶ吟情、日日に新たなるを。
聞道く吾を誹る狂狷の者、然と雖ども、虚飾、心身を縛る。
７０−
偶得 下平７陽韵仄起
他国穩棲遊冶郎，此纔容膝讀書堂。
屈身數歳詩千首，累日孤牀夢一場。
自怪山居無豈楽，翻疲月課未安康。
何時故叟熟眠後，閑坐釣磯塵事忘。
他国に穩棲す遊冶郎、此れ纔に容膝す、讀書の堂。
屈身數歳、詩千首、累日孤牀、夢一場。
自怪山居、豈に楽む無く、翻疲月課、未だ安康せず。
何れの時にか故叟、熟眠の後、釣磯に閑坐して、塵事、忘る。
７１−
偶得 下平７陽韵仄起
迂拙人生塵慮長，蠧書親愛奈頽唐。
十年積貯詩千首，半生光陰夢一場。
敖骨方今遺悔恨，偏心尚古未安康。
任地志業非成就，高臥青山學楚狂。
迂拙の人生、塵慮長く、蠧書、親愛にして奈んぞ頽唐。
十年の積貯、詩千首、半生の光陰、夢一場。
敖骨、方今、悔恨を遺し、偏心、尚古、未だ安康せず。
任地志業、成就に非ず、青山に高臥して楚狂を學ぶ。
７２−
偶得 下平６麻韵仄起
老餘日月折腰嗟，皓首頽顔蔑以加。
死生有命誰無限，貴賎聴天焉挟邪。
朝弄漁竿湖水岸，暮斟村酒野叟家。
個中懊悩丹翰課，一夢三年百慮差。
老餘の日月、折腰を嗟き、皓首頽顔、蔑以加う。
死生、有命、誰ぞ無限、貴賎、聴天、焉ぞ挟邪。
朝に漁竿を弄す湖水の岸、暮に村酒を斟野叟の家。
個中、懊悩、丹翰の課、一夢、三年、百慮の差。
７３−
美松山房偶得 下平１３覃韵仄起
湖國松山凝夕嵐，捲遊吟客獨難堪。
林容荒梗九愁老，露氣満盈千樹含。
聞了遠鐘望嶺北，飛來朔雁去天南。
今朝逢雨歸期錯，詩酒心耽酒特婪。
湖國の松山、夕嵐を凝し、吟客は捲遊し獨り堪難し。
林容、荒梗、九愁老い露氣、満盈、千樹含む。
遠鐘を聞了り嶺北を望み、朔雁は飛び來りて天南に去る。
今朝、雨に逢いて歸期を錯り、詩酒、心耽、酒は特婪。
７４−
読書偶成 上平４支韵平起
先賢功蹟奈何資，尋討遺篇有典儀。
傲骨弱年陳抱負，老躯今日只嗟咨。
人情物理甚難擬，治乱興亡未得知。
空歎吾生愚克鈍，秋來却喜讀書宜。
先賢の功蹟、奈何ぞ資なる、遺篇を尋討して典儀有り。
傲骨の弱年、抱負を陳べ、老躯の今日、只だ嗟咨たり。
人情、物理、甚だ擬え難く、治乱、興亡、未だ得を知らず。
空く吾生を歎く愚克鈍、秋來りて却って喜び讀書宜し。
７５−
偶占 下平９青韵仄起
幽人忤世易飄零，日夕居然掩竹庭。
凡骨惜時繙古巻，愁心思飲撫空瓶。
窮途幾許歌仍哭，活気無稽夢也醒。
魂魄寥寥身碌碌，自甘波上一浮萍。
幽人、忤世、飄零易く、日夕、居然として竹庭を掩う。
凡骨は時を惜みて、古巻を繙き、愁心、思飲して空瓶を撫す。
窮途、幾許、歌仍哭き、活気、無稽、夢也た醒む。
魂魄は寥寥として身は碌碌、自ら波上に甘んず一浮萍。
７６−
獨坐偶占 上平４支韵平起
深更獨坐夜眠遅，囘顧於今多所思。
痩骨只餘華髪紊，老身添得悴顔衰。
一生人事幾波亂，十載世途旋數奇。
個裡殷憂何不去，絶無活気似痴兒。
深更に獨坐して夜る眠る遅く、於今を囘顧すれば所思多し。
痩骨は只だ華髪紊を餘し、老身は悴顔衰を添得る。
一生の人事、幾波亂、十載の世途、數奇旋る。
個裡、殷憂、何んぞ去ず、絶えて活気無く、痴兒に似たり。
７７−
偶吟 上平１５刪韵平起
書斎隠几一心閑，秋氣澄來入晩關。
緬想傲人追古道，徒然弄筆寫青山。
朝援鄰叟拾詩去，暮命家童沽酒還。
這裡吾生何取得，唯餘双鬢二毛斑。
書斎の隠几、一心閑かに、秋氣、澄來りて晩關に入る。
緬に想う、傲人、古道を追うを、徒然に筆を弄して青山を寫す。
朝に鄰叟を援けて詩を拾い去り、暮に家童に命じて沽酒、還る。
這裡の吾生、何の取得ぞ、唯ぞ双鬢、二毛の斑を餘さん。
７８−
偶吟 下平８庚韵仄起
棄損塵俗道心平，孤坐胸間亦復情。
几案古燈書數巻，松窓新月夜三更。
残樽傾酌醉餘意，破硯閑磨吟未成。
精巧詠詩吾不事，何図世説趁功名。
塵俗を棄損して道心平かに、胸間に孤坐し亦た復情。
几案の古燈、書數巻、松窓の新月、夜三更。
残樽を傾酌して醉餘の意、破硯、閑磨して吟未だ成らず。
精巧なる詠詩、吾、事とせず、何んぞ図らん世に説う功名を趁うを。
７９−
苦吟 上平１１韵眞韵平起
一吟一詠欲驚人 字字雌黄加筆頻。
老去詩才全既遅 裁來句格未成真。
情文託意非無楽 詞致知音却有辛。
可識吾生愚且鈍 錯爲騒客白頭新。
一吟、一詠、人を驚かさんと欲し、字字の雌黄、加筆、頻なり。
老去の詩才、全て既に遅れ、句格を裁來りて未だ真を成さず。
情文を意に託して無楽に非ず、詞致、知音、却って辛き有り。
識る可し、吾が生、愚且鈍なるを、錯りて騒客と爲つて白頭新なり。
８０−
苦吟 上平４支韵仄起
世累塵機両両遺 葦編玩讀傍簾垂。
閑烹茶鼎晝相好 獨酌酒杯宵更宜。
白髪無情衰老後 青燈有味醉吟時。
韻書千巻做師法 遥夜刪裁唱和詩。
世累の塵機、両両遺し、葦編を玩讀す簾垂の傍。
閑烹ず茶鼎、晝相い好く、酒杯を獨酌して宵更に宜し。
白髪、無情、衰老の後、青燈、有味、醉吟の時。
韻書千巻、師法を做し、遥夜、刪裁す唱和の詩。
８１−
苦吟 上平４支韵平起
苦吟索句趁心怡 又是残編獺祭時。
絞盡枯腸求帖妥 究明雅韻料常宜。
暖衣飽食非無望 守節甘貧輙有資。
聞道古人聯綴語 讀書萬巻最能詩。
苦吟、索句、心怡を趁い、又た是れ残編、獺祭の時。
枯腸を絞盡して帖妥を求め、雅韻を究明して常に宜しきを料る。
暖衣飽食、望み無きに非ず、節を守り貧に甘んじ有資を輙す。
聞道、古人、聯綴の語を、讀書萬巻、最も詩を能す。
８２−
吟望 下平５歌韵平起
晴天白日渡山河，陽氣満盈千里和。
野馬集丘芳草出，沙鴎戯處賈船多。
遠峰送雨篭青靄，隣壑迎春纏翆蘿。
静晝得閑吟望久，憑欄長嘯快如何。
晴天白日、山河を渡り、陽氣満盈、千里和む。
野馬輯集して芳草は出で、沙鴎戯る處、賈船多し。
遠峰、雨を送りて、青靄篭め、隣壑、春を迎えて翆蘿を纏う。
静晝に閑を得て吟望久しく、欄に憑り長嘯して快、如何。
８３−
吟望 下平６麻仄起
一望千山萬里麓，露臺四面纏軽紗。
雨初爽霄天光淡，雲正聯飛日照斜。
暮色池塘垂柳静，春陰郊郭紫煙遮。
抽毫撫景案詩久，佳句難成切嘆嗟。
一望千山、萬里の麓、露臺四面、軽紗を纏う。
雨は初めて爽霄して、天光淡く、雲は正に聯飛して、日照斜なり。
暮色の池塘、垂柳静かに、春陰の郊郭、紫煙遮ぎる。
毫を抽り景を撫して案詩久しく、佳句成り難切嘆嗟く。
８４−
吟行 下平８庚韵平起
豚兒兄弟侭堪耕 野叟得閑嘗客行。
遊屐穿山春暢達 負嚢投館月分明。
佳詩既與好音忘 短筆聊追勝景成。
且向海風吹醉面 滄溟千里一望清。
豚兒兄弟、堪耕侭し、野叟閑を得て客行嘗。
遊屐は山を穿き春暢達し、嚢を負い投館すれば月分明。
佳詩、既に興、好音忘れ、短筆聊か追うて勝景成る。
且つ海風に向いて醉面を吹く、滄溟千里、一望の清。
８５−
獨酌閑吟 後聯古人成句借以作一詩 上平１東韵平起
罍樽傾酌自無語，心醉何希魚肉豊。
酒沃愁腸宜去恨，詩追佳興不求工。
半生頗似燭遭跋，宿志只如船逆風。
百事未成空已老，囘懐身迹是蒙童。
罍樽傾酌、自ら語無く、心醉、何んぞ希なる魚肉豊なるを。
酒は愁腸を沃し宜しく恨を去り、詩は佳興を追いて、工を求めず。
半生頗る似たり遭跋の燭に、宿志只だ逆風の船の如し。
百事、未だ成らずして空く已に老い、囘懐、身は迹た、是れ蒙童たり。
８６−
病酒吟 上平１０灰韵平起
一身病酒且抛杯 書册仍於枕上開。
砌裡雀驚俄雨去 庭中蜂索舊香來。
臥牀憂患恐長夜 嘗薬傷心似冷灰。
吹暖小春吾忘我 携毫強詠菊花囘。
一身、病酒、且つ杯を抛ち、書册は仍於、枕上に開く。
砌裡の雀は俄雨に驚きて去り、庭中の蜂は舊香を索して來る。
臥牀憂患、長夜を恐れ、嘗薬傷心、冷灰に似たり。
吹暖の小春、吾は我を忘れ、毫を携え強いて菊花を詠じ囘る。
８７−
病中吟 上平４支韵平起
朝昏謝客下房帷 伏枕病夫多所思。
痩骨臥牀悠似溢 贏身薬餌意如癡。
功名富貴吾非分 貧賎疎慵誰得醫。
半百餘生渾夢夢 浮世笑殺老樓遅。
朝昏客に謝し、房帷を下し、伏枕の病夫、思う所、多し。
痩骨の臥牀、悠は溢に似て、贏身の薬餌、意は癡の如し。
功名、富貴、吾が分に非ず、貧賎、疎慵、誰ぞ醫得せん。
半百の餘生、渾て夢夢、浮世笑殺し、老は屡遅し。
８８−
病中吟 下平８庚韵平起
寝牀伏枕不心平，獺祭檢書何限情。
往昔騒人誇活力，於今詞客缺抗衡。
養痾却覚多塵念，嘗薬侭知如宿酲。
悪夢醒來天又暗，通宵輾轉逆晨明。
寝牀伏枕、心平らかならず、獺祭檢書、何んぞ情を限らん。
往昔の騒人、活力を誇り、於今の詞客、抗衡を缺く。
養痾、却って覚ゆ塵念の多きを、嘗薬、侭く知る宿酲の如きを。
悪夢醒來りて、天又た暗く、通宵輾轉して晨明逆なり。
８９−
書客愁 上平１４寒韵仄起
客裡貧中得便難，愁情無限宿志酸。
地飄白雲家書絶，天覆黒雲山路寒。
朝購米塩歸草舎，暮傾瓶酒瀝胸肝。
他郷獨立人如問，莫奈羇魂痴夢残。
客裡貧中、便に得難く、愁情限り無く、宿志酸たり。
地は白雲を飄し家書は絶え、天は黒雲を覆し、山路は寒し。
朝、米塩を購いて草舎に歸り、暮に瓶酒を傾けて胸肝を瀝す。
他郷に獨り立ち、人問うが如く、奈んぞ羇魂、痴夢の残する莫れ。
９０−
書懷 古人成句使用 上平６魚韵平起
囘懷少小惜居諸，輕學未成吾愧予。
廚裡残樽今夜酒，篋中古巻往年書。
數間茅屋妻孥傲，一穂吟燈儔侶疎。
半百人生渾若夢，遊魂弾鋏食無魚。
囘懷少小、居諸を惜み、輕學未だ成らずして吾、予を愧む。
廚裡の残樽、今夜の酒、篋中の古巻、往年の書。
數間の茅屋、妻孥傲り、一穂の吟燈、儔侶の疎。
半百の人生、渾て夢の若く、遊魂、弾鋏、食すに魚無し。
９１−
歸郷展墓 上平１２文韵平起
故郷又弔祖霊墳，積翆煢田鳥雀群。
匝日已從林上落，残蝉偏自樹頭聞。
秋風拂地絶無暑，雨氣滔天唯有雲。
勤後老僧留賽客，點茶仍説寳文経。
故郷又また弔う祖霊の墳を、積翆煢田、鳥雀群れる。
匝日已に林上從り落ち、残蝉は偏えに樹頭自り聞く。
秋風は地を拂いて絶えて暑無く、雨氣は天に滔して唯だ雲有り。
勤後の老僧、賽客を留め、茶を點じて仍お説く寳文の経を。
９２−
迎舊友賦似 上平１２文韵平起
相逢旧友意何云，青眼展眉援手欣。
茅屋招來傾酒盞，書窓對坐話詩文。
知他歳月終難返，羨慕功名不厭聞。
送別驛頭盟再會，雨風昏暮思紛紛。
旧友と相い逢うて意、何を云わん、青眼展眉、手を援して欣ぶ。
茅屋に招き來りて、酒盞を傾け、書窓に對坐して詩文を話す。
他を知る歳月、終に返り難く、羨慕功名、聞を厭はず。
驛頭に送別して再會を盟し、雨風昏暮、思は紛紛たり。
９３−
帰郷二題 其二 上平１５刪韵仄起
弱冠出郷成客還，想深緑樹萬重山。
富春垂釣碧波滸，短日拾薪黄葉間。
曾記郊村如好夢，這般田野似慈顔。
迎吾阿母先浮涙，今古貧家心自閑。
弱冠郷を出客と成りて還り、深く想う緑樹、萬重の山。
富春に垂釣す碧波滸り、短日に薪を拾う黄葉の間。
曾つて記す郊村、好夢の如く、這般の田野、慈顔に似たり。
吾を迎えし阿母は先ず涙を浮べ、今古の貧家、心自から閑なり。
９４−
帰郷二題 其一 下平１先韵平起
薫風田野午晴天，雲影涛聲孤杖前。
村社祠頽銅鐸黙，道碑字没草蘿纏。
一條古路追胡蝶，萬緑茂林鳴杜鵑。
忽識歸來非異客，囘看景物尚依然。
薫風の田野、午晴の天、雲影の涛聲、孤杖の前。
村社の祠は頽れ銅鐸は黙し、道碑の字は没し草蘿は纏う。
一條の古路に胡蝶を追えば、萬緑の茂林に杜鵑鳴く。
忽ち識る歸り來りて異客に非らず、囘看の景物、尚お依然たり。
９５−
骨折書苦 其一 下平７陽韵平起
独乖勝會守虚堂，痛痒交來骨折傷。
胸臆寂寂哀感切，医箴眷眷養生長。
三春既去猶難癒，百慮於今未得康。
何日與君相結約，尋山問水也傾觴。
独り勝會に乖きて虚堂を守り、痛痒、交來して骨、折傷。
胸臆は寂寂として哀感切に、医箴は眷眷として養生長し。
三春は既に去り猶癒し難く、百慮は於今、未だ康を得ず。
何の日か君與と相い約を結び、山を尋ね水を問い也た觴を傾けん。
９６−
骨折書苦 其二 上平１東韵仄起
尚苦瘡傷伴薬篭，孤燈跨月僅痊中。
朝來絶少償詩債，吟去未容添酒功。
坐見空前芳草緑，偶尋籬畔落花紅。
三春終不須吟杖，愁殺密雲斜雨風。
尚苦瘡傷、薬篭を伴い、孤燈跨月、僅痊の中。
朝來、絶えて少し詩債を償うを、吟去、未だ容れず添酒の功を。
坐に空前、芳草の緑なるを見、偶たま籬畔、落花の紅を尋ぬ。
三春、終いに須く吟杖せず、愁殺す密雲、雨風の斜なるを。
９７−
闘病 下平１先韵仄起
二豎膏肓撹乱専，三尸蟲共讒鈞天。
妖魔嘲誚迷魂夢，貧鬼潛蟠妨疾痊。
篤養沈痾旬歳後，却求新薬苦泰然。
倖呼九死一生得，羨慕健強長寿仙。
二豎膏肓、撹乱専に、三尸蟲共は鈞天を讒る。
妖魔は嘲誚して魂夢は迷い、貧鬼は潛蟠して疾痊を妨ぐ。
篤養、沈痾、旬歳の後、却って新薬を求めて苦泰然たり。
倖呼九死一生を得、羨慕う健強、長寿仙を。
９８−
記客悲 下平１２侵韵仄起
老来豪氣絶，觸物太傷心。
樹功情已遠，落魄恨彌深。
進退何乖意，憂愁却不任。
雨風山下屋，遣悶枉孤斟。
老い来りて豪氣は絶え、物に觸れて太だ傷心。
功を樹てるに情は已に遠く、落魄して恨は彌いよ深し。
進退、何んぞ意に乖く、憂愁、却って不任。
雨風、山下の屋、遣悶、孤斟を枉ぐ。
９９−
述懐似人 下平７陽韵仄起
身世崢崢何所望，矜持誦詠満吟嚢。
清貧日月一瓢飲，苦節風塵両鬢霜。
凡骨相婪詩與酒，短才尚宿狷兼狂。
豈将野老愚頑性，脱俗人間名利場。
身世崢崢、何んの望む所ぞ、誦詠を矜持して吟嚢を満す。
清貧の日月、一瓢の飲、苦節の風塵、両鬢の霜。
凡骨、相い婪す詩と酒と、短才、尚お宿す狷と狂と。
豈に将に野老、愚頑の性、脱俗の人間、名利の場。
１００−
阿母手簡 下平７陽韵平起
阿嬢手簡届山房，不耐深情涙數行。
届指十年歸未得，傷心半夜憾偏長。
鏡中何事髪先白，貧裡盡頭心欲狂。
坐對短檠羞素心，覊魂悲感駛家郷。
阿嬢の手簡、山房に届き、深情に耐えず涙數行。
届指十年、歸未だ得ず、傷心半夜、憾み偏えに長し。
鏡中、何事ぞ髪は先ず白く、貧裡、盡頭、心狂わんと欲す。
坐に短檠に對して、素心を羞じ、覊魂、悲感して家郷に駛す。
１０１−
詩酒筵 下平８庚韵仄起
江鴎湖鷺不寒盟，趁約優遊身又輕。
喜問騒壇詩可贈，屡陳錦字句難成。
閑談一刻人相豫，芳酒百杯心自平。
献酬應酢快何若，列座吟朋有厚情。
江鴎湖鷺、不寒の盟、趁約優遊して身は又た輕し。
喜問す騒壇、詩贈る可く、屡陳す錦字、句成り難し。
閑談一刻、人相豫し、芳酒百杯、心自から平かなり。
献酬、應酢、快何若く、列座の吟朋、厚情有り。
１０２−
被某兄送詩文次以答 下平８庚韵仄起
敬愛宏才長老兄，教吾魯鈍啓昏盲。
雅文被贈羨令望，新句欲酬虧妥平。
片字雌黄詩一首，校書檢閲夜三更。
詞場應戦最強敵，猶挑難攻不落城。
敬愛す宏才、長老兄を、吾を魯鈍教む啓昏の盲。
雅文を贈被れて令望を羨み、新句を酬せんと欲して妥平を虧む。
片字雌黄、詩一首 校書檢閲、夜三更。
詞場、應に戦う最強の敵、猶お挑む難攻不落の城を。
１０３−
簡二兒 下平８庚韵平起
中原逐鹿奈何情，儂臥青山得失輕。
志業因心關算術，雄圖守道取功名。
他郷春月太無頼，暗夜雨風吹有甍。
只憶勤家二兒事，憂愁不耐酒頻傾。
中原に鹿を逐う奈何の情ぞ、儂は青山に臥して得失輕し。
志業心に因りて、算術に關わり、雄圖道を守りて功名を取る。
他郷の春月、太だ無頼、暗夜の雨風、甍を吹く有り。
只だ勤家を憶う二兒の事、憂愁に耐えずして酒、頻りに傾く。
１０４−
桃源郷 晩春又到山居詩之借韻 上平４支韵平起
夜來慈雨午初披，春樹苑花催促時。
欲問陶潛遭李廣，仍尋董奉遇西施。
杏桃灼灼百分艶，紅白紛紛一様奇。
香夢睡醒援紙筆，武陵新賦洞天詩。
夜來の慈雨、午、初めて披き、春樹、苑花、催促の時。
陶潛を問わんと欲し、李廣に遭い、仍お董奉を尋ぬるに、西施に遇う。
杏桃灼灼、百分艶に、紅白紛紛、一様奇なり。
香夢の睡り醒めて、紙筆を援き、武陵、新に賦す、洞天の詩。
董奉 9-794 ﾄｳｼﾝ
唐李忠臣
陶潛 1063 ﾄｳｾﾝ 陶淵明 五柳先生
東晋末の詩人
西施 0902 ｾｲｼ 春秋時代の越の美女
西子
李廣 0498 ﾘｺｳ 前漢の武将 飛将軍
李陵の祖父
香夢 1112 ｺｳﾑ 花の下などで見る夢
灼灼 0621 ｼｬｸｼｬｸ
花が盛んに咲いているさま
武陵 0543 ﾌﾞﾘｮｳ 武陵桃源
転じて理想郷
洞天 0581 ﾄﾞｳﾃﾝ 仙人の居るところ
１０５−
釣舟 上平４支韵平起
夏初又試釣舟嬉，舊識漁翁解笑眉。
蠏舎晝閑鳩喚婦，鷺汀春盡燕将兒。
水光艶瀲吹風快，山色蒼范片雨奇。
終日臨流仍不厭，侭忘塵事興垂絲。
夏初、又た試す釣舟の嬉びを、舊識の漁翁は笑眉を解く。
蠏舎は晝閑にして鳩は婦を喚び、鷺汀は春盡きて燕は兒を将む。
水光艶瀲として吹風の快、山色蒼范として、片雨の奇。
終日、流に臨みて仍お厭わず、塵事を侭忘す、垂絲の興に。
１０６−
病酒 下平１先韵仄起
愛飲何分聖與賢，稱觴不飽歳華遷。
衰躯衰眼又衰力，半醉半醒翻翻眠。
中酒茫然空自慨，窮途老矣阿誰憐。
青衿出里違初志，可惜吾生已晩年。
愛飲何分ぞ聖と賢と、稱觴、飽ず歳華遷る。
衰躯、衰眼、又た衰力、半醉、半醒、翻翻の眠。
中酒、茫然、空く自慨、窮途、老矣、阿、誰ぞ憐む。
青衿、里を出で初志と違い、惜む可し吾が生、已に晩年。
１０７−
愛酒 上平１３元韵仄起
客歳吟衣多酒痕，歓斟悲酌又鯨呑。
傷情付與忘憂物，閑飲謳敲缺瓦樽。
未教酩酊褫心志，翻使醉眠迷夢魂。
毎託麹君吾倒筆，山肴珍味聖賢存。
客歳の吟衣、酒痕多く、歓斟、悲酌、又た鯨呑。
傷情、付與、憂物を忘れ、閑飲、謳敲、瓦樽を缺く。
未だ酩酊教めず心志は褫い、醉眠を翻使しめて夢魂は迷う。
毎に麹君に託し吾は筆を倒し、山肴、珍味、聖賢存す。
１０８−
鴨川 下平５歌韵平起
疎柳橋邊坊曲阿，清宵踏韈偶經過。
繁華殿上紅裙召，歓楽街頭醉漢多。
白叟不堪雲客意，青樓猶聴雪兒歌。
古都曾記放舟處，今見鳬川只逝波。
疎柳の橋邊、坊曲阿、清宵、踏韈、偶ま經過。
繁華、殿上、紅裙召き、歓楽街頭、醉漢多し。
白叟は堪ず、雲客の意を、青樓、猶聴く雪兒の歌。
古都、曾つて記す、放舟の處、今見る鳬川、只だ逝波。
１０９−
奇巖 上平１東韵仄起
十里舟遊観海東，竹州松嶋碧波中。
懸崖幾處斜撃石，斷岸千尋倒捲風。
鯢浪鯨涛揺大地，龍吟虎嘯失蒼穹。
江湖三絶若相問，折筆賞嘆形勢雄。
十里の舟遊、東を観海る、竹州松嶋、碧波の中。
懸崖、幾處、石を撃つこと斜めに、斷岸、千尋、風を捲きて倒る。
鯢浪、鯨涛、大地を揺がし、龍吟、虎嘯、蒼穹を失。
江湖の三絶、若し相い問わば、折筆賞嘆す、形勢の雄。
１１０−
竹 上平１１眞韵平起
窓前愛見一叢珍，戛玉檀欒卓節身。
瀟酒脩容雲作伴，婆娑疎影月爲鄰。
卜將定地柳眼後，迎得裁庭竹醉辰。
已送五風兼十雨，此君碧蓋翠裙新。
窓前、愛し見る一叢の珍を、戛玉、檀欒す卓節の身。
瀟酒なる脩容、雲は伴を作し、婆娑たる疎影は月は鄰を爲す。
卜將、定地、柳眼の後、迎え得たり、裁庭、竹醉の辰。
已に五風と十雨を送り、此君、碧蓋、翠裙新たなり。
１１１−
睡蓮
上平４支韵平起
睡蓮花發雨餘時，麗質凝妝絶世姿。
弄影嬋娟浮翠蓋，飄香馥郁満青池。
風中秀葉轉珠露，波上艶葩含粉披。
不穢淤泥嬌笑態，豊肌弱骨比西施。
睡蓮の花は發く雨餘の時、麗質、妝を凝す絶世の姿。
弄影は嬋娟として翠蓋を浮かべ、飄香、馥郁として青池に満つ。
風中の秀葉は珠露を轉ばし、波上の艶葩は粉披を含む。
淤泥に穢れず、嬌笑の態を、豊肌、弱骨、西施に比す。
１１２−
老松 下平７陽韵仄起
一樹老松凭古堤，遐齢幾歳色蒼蒼。
薜蘿已絡翠條重，雲霧常篭緑蓋長。
三冬守節能堪凍，九夏作陰頻送涼。
最好清宵邀璧月，龍吟鳳嘯奏宮商。
一樹の老松、古堤に凭り、遐齢幾歳か、色は蒼蒼たり。
薜蘿、已に絡む翠條重なり、雲霧、常に篭みて緑蓋は長し。
三冬、節を守りて能く凍に堪え、九夏、陰を作して頻に涼を送る。
最も好きは清宵に璧月を邀え、龍吟、鳳嘯、宮商奏す。
300律詩雑題完
曄歌坤歌偲歌瀛歌三連五七律自由詩笠翁対韻羊角対漢歌漢俳填詞詩余元曲散曲楹聯