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本文抜粋50頁から60頁

@芙蓉並蔕 A“竹枝”、B一心連。
C花侵?子 D“竹枝”、E眼應穿 F“女児”。

  異体一 単調十四字兩句兩仄韵
仄韵の作品
  皇甫松
山頭桃花“竹枝”、谷底杏“女児”。 xing4
○○○○   、●●★   。

兩花窈窕“竹枝”、遙相映“女児”。 ying4
●○●●   、○○★   。

【解説】この作品には“竹枝”“女児”の合いの手が入る。合いの手は散曲に用いられる襯字でもある。
 竹枝は宋詞で一番文字数の少ない定型と謂われているが、別体に単調二十八字四句三平韵の定型がある。

【附注】此処での山頭桃花の記載は、解説のためなので、紙面枠一杯に書いているが、作品の場合は、二字の余白を設ける事を為さなければならない。

  竹枝・蒼穹幽谷 台湾某氏
  蒼穹幽谷“竹枝”、第一泉“女児”。涓涓凝脂“竹枝”、浴中仙“女児”。

  竹枝・深情沃土 中山逍雀
  深情沃土“竹枝”、緑一川“女児”。峯有頂巒“竹枝”、望福源“女児”。

【附注】特段の作品題が無い場合、作品中の一句を取り出して、作品題とする場合がある。
【解説】農村の風景である。二章構成であるが、離れすぎず着きすぎずが肝要で、見てくれ!こんなにも豊だよ!と語りかけが要件である。
 中華詩詞壇対応作品にする爲には、どの作品にも謂えることだが、自己完結に成らぬ事が肝要で、最後の句を実句にする事が、間違いを犯さぬ方法である。
【考究】作品としては、十四字より短小な作品はある。然し其れは何れも、当該作品固有の形態である。因って定型の範疇には入らない。
 此処に挙げた「竹枝」は詞譜に掲載されている定型で、現在でもその定型を踏襲して創作する作者が居る。
【考究】作品がこれほどの短小になると、日本詩歌との比較が話題の一つと成る。
 漢字は一字一義と言われているが、実際に使用する場合は、一字単独で用いることはほとんど無い。二字を一つのブロックとして用いるのが現状である。然らば、二字二義かと言うと、そうとは限らない。二字一義も多い。
 一方、日本語は、仮名綴りで言えば、仮名二字が漢字一字に相当する場合が多いので、二字一義かと言うと、あながちそうとも言えない。仮名一字が漢字一字に相当する場合も多々有る。
 仮名詩歌と漢字詩歌を比較して研究討論する場合は、上述の要件を検討材料に加味する事が必要である。



016−1735
4−2 歸字謡
  十六字令・偸聲・蒼梧謡・花嬌女
  單調十六字四句三平韵

 詞の中で二番目に小形な、文字数の少ない詞格律である。一番短い「竹枝」は日本詩壇では云う人を見受けないから、日本詩壇で云えば、一番小形な詞形と言える。歸字謡は十六字で構成され、又の名を「十六字令」とも謂われ、その構成から「偸聲」とも言われる。

歸。 gui1
☆。

獵獵薫風??旗。 qi2
●●○○●●☆。

闌教住,重挙送行杯。 bei1

○●●,●●●○☆。

【定型】
平一韵到底格
@は作品の主題と趣旨を述べる句で有る
ABは@に対応して説明を做す句で有る
Cは作品の結論を導き出す糸口の句である

@歸。
A獵獵薫風??旗。
B闌教住,C重挙送行杯。

  歸字謡二闕 毛沢東
  山。快馬加鞭未下鞍。愕回首,離天三尺三。
  山。倒海飜江巻巨瀾。奔騰急,萬馬戦猶酣。

  歸字謡三闕 黒龍江省 除 敬業
  糧。十億人丁謀備荒。耕田減,稼穡費思量。
  糧。五穀豊饒夙願償。繁禽畜,肉卵保民康。
  糧。四海瓊漿醇香釀。何堪忘,従酒奪斎梁。

【解説】定型が小さいからと謂って、小さい事しか綴れないかと謂うとそうではない。二首でも三首でも組み合わせれば良いのである。

  歸字謡・吉林省 蔡伸
  天。休使圓蟾照客眠。人何在,桂影自嬋娟。

歸字謡・鎌 日本 中山逍雀
  鎌。只任前臂強弱腱。農民秘,割草萬世基。

【解説】
 十六字令の最初の一字は、平聲で、韵字でもある。更に、後に続く三句に関わりを持つ詩眼に相当する文字を用いることが肝要である。
 一文字の初句は作品の主題を述べる。
 続く三句は初句の説明となる。

【考究】偸聲とは聲を偸と謂うように、七言絶句から必要な聲を抜き取った形と一致する。
       ☆。 起句
●●○○、●●☆。 承句
     ○●●, 転句
  ●●、●○☆。 合句
 十六字令の詞譜として書き出せば、下記の如くとなる。
☆。●●○○、●●☆。○●●,●●、●○☆。
 一例として、絶句から聲を偸んで十六字令にしてみよう。
  涼州曲 王翰
葡萄美酒夜光杯,
欲飲琵琶馬上催。
酔臥沙場君莫笑,
古来征戦幾人回。

 此でほぼ原作に近い十六字令の作品として成り立つ。然し、どれでも声を偸めば十六字令に成るわけではない。
 以上は偸聲の説明であって十六字令そのものの説明ではない。このような例は他にもあるが、詞は詞譜に倣って作るのが本筋である。

  歸字謡六闕 中山逍雀
  櫻。野寺前庭訪舊盟。遇?處,樹下共杯傾。

【日語】櫻。野寺の前庭に舊盟を訪う。
?に遇う處,樹下で共に杯を傾けん。

  塵。担腹詩痴両地春。深似海,投句餞徂春。

【日語】塵。担腹の詩痴、両地の春。
深きこと海に似て,句を投じ徂く春に餞す。

  潯。細雨池亭野水侵。雲散盡,高樹繞枝禽。

【日語】潯。細雨の池亭に野水は侵し。
雲は散り盡し,高樹に枝禽は繞る。

  憂。一葉庭梧先入秋。音信絶,破壁汗珠流。

【日語】憂。一葉の庭梧は先ず秋に入り。
音信絶え,破壁に汗珠流る。

  時。陋巷屋擔野雀子。痩枝下,孔子爲吾師。

【日語】時。陋巷の屋擔の野雀子。
痩枝の下,孔子は吾が師と爲す。

  裳。酒醒香消夜未央。灯下静,枕上月如霜。

【日語】裳。酒醒め香消え夜は未だ央ならず。
灯下静かにして,枕上の月は霜の如し。

【解説】詞の数詞は単調の作品には“闕”を用い、雙調以上の作品には“首”が用いられている。その理由として、単調は“曲”の要素が多分にあるので、曲の数詞を用いるとも謂われている。



020−5555
4−3 拜新月
  単調二十字四句兩仄韵

  李端
開簾見新月,便即下階拜。 bai4
○○●○●,●●●○★。

細語人不聞,北風吹裙帯。 bai4
●●○●○,●○○○★。

□□拜新月 秋夜酌酒 中山逍雀
□□枝頭九分月,颯颯感秋夜。養拙翰墨縁,酌醇親朋別。

【定型】
仄一韵到底格
【解説】五言四句の作品である。四句だからといって起承轉合に頼るべきではない。詞には詞の構成法がある。
【解説】作品題が詞牌名と同じ場合は 本意 と書く。



020−3377
4-4 梧桐影
  単調二十字四句兩仄韵

  呂巌
明月斜,秋風冷。 len3
○●○,○○★。

今夜故人來不來,教人立盡梧桐影。 ying3
○●●○○●○,○○●●○○★。

【定型】
仄一韵到底格
@とAは對偶
【解説】詞の對偶は詩の對仗ほどに厳格ではない。平仄相対とは限らない。要は文法構造の合致が条件となる。

@明月斜,A秋風冷。 len3
B今夜故人來不來,C教人立盡梧桐影。 ying3

  梧桐影・本意 中山逍雀
  門口霜,梧桐影。春到丈夫還不來,工棚角落急鈴響。

【解説】作品題が詞牌名と同じ場合は 本意 と書く。



022−7472
4−5 慶宣和
  単調二十二字五句三平韵兩叶韵

  慶宣和 張可久
雲影天光乍有無。      wu2
●●○○▲●☆。

老樹扶疎。 shu1
●●○☆。

萬柄高荷小西湖。 hu2
●●○○●○☆。

聴雨。 yu3
●★。叶韵

聴雨。叶韵の畳韵 yu3
●★。

【定型】
仄一韵到底格
Cは叶韵である。 u 姑韵の平聲に対して仄聲である。
DはCの畳韵である。
【附注】聴雨を重ねているが、全ての作品が二字を重ねているとは限らない。重ねるのは一字だけで、他は自由裁量も多多ある。

@雲影天光乍有無。 wu2
A老樹扶疎。 shu1
B萬柄高荷小西湖。 hu2
C聴雨。 yu3
D聴雨。 yu3

  慶宣和・美人飲酒 中山逍雀
  句句思君歳月巡。花顔純真。双燕回巣往来頻。
倒酒。倒酒。

  慶宣和・美人待月 中山逍雀
  半夜開窗慰此躬。繊指浅紅。白露圓新月如弓。
欲寄。欲寄。

  慶宣和・船員獨愁 中山逍雀
  獨自斟商埠酒家。新月窗紗。忘難羇情一枝花。
月影。月影。



023−5555
4−6 南歌子単調
  単調二十三字五句三平韵
  異体一 単調二十六字五句三平韵

  温庭?
手裏金鸚鵡,胸前?鳳凰。     huang2
●●○○●,○○●●☆。

偸眼暗形相。 xiang1
○●●○☆。

不如從嫁與,作鴛鴦。 yang1
●○○仄仄,●○☆。

【定型】
平一韵到底格
@Aは對偶

@手裏金鸚鵡,A胸前?鳳凰。 huang2
B偸眼暗形相。
C不如從嫁與,D作鴛鴦。 yang1

  異体一 単調二十六字五句三平韵
  南歌子・日本詩友 北京市 汪普慶
両岸遥相望,一衣帯水連。 lian2
●●○●●,○○●●☆。

清茶香銘泳詩篇。 pian1
▲○△●●○☆。

正是烟雲散去,艶陽天。 tian1
○●●○○●,●○☆。

【定型】
@とAは對偶
平一韵到底格

@両岸遥相望,A一衣帯水連。 lian2
B清茶香銘泳詩篇。 pian1
C正是烟雲散去,D艶陽天。 tian1



023−6237
4−7 荷葉杯
  単調二十三字六句四仄韵兩平韵
  異体一 単調二十六字六句兩仄韵三平韵一畳韵
  異体二 雙調五十字前後段各五句兩仄韵三平韵

  温庭?
一點露珠凝冷。 leng3
●●●○○★。

波影。 ying3
○★。

満池塘。 ting2
●○☆。

緑茎紅?兩相亂。 luan4
●○○●●○★。

腸断。 duan4
○★。

水風涼。 liang2
●○☆。

【定型】
平仄押韵格
@Aは仄韵
Bは新たな平韵
Cは@Aの仄韵を踏襲する
Dは@ACの仄韵を踏襲する
EはBの平韵を踏襲する

@一點露珠凝冷。 leng3
A波影。 ying3
B満池塘。 ting2
C緑茎紅?兩相亂。 luan4
D腸断。 duan4
E水風涼。 liang2

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