漢詩詞教本古典基04 中山逍雀漢詩詞創作講座填詞詩余楹聯こちらからお探し下さい

古典詩基本講座
第4講
3-5 句中對
 一句7文字の中に対句を配する事を「句中対の有る句」と云う。先ず対句とは、有る句に対照して一定の関係を持った句を指していう。相対する2句を指して対句という説明をした記述を屡々見受けるが、対句とは対応する後側の句を云うので、前側の句は対句でも何でもない。
 対句の要件は
イ 色に対しては色
ロ 数に対しては数
ハ 名詞を実字と云い、実字は実語に対応する
ニ 動詞助動詞を虚字と云い、虚字は虚字に対応する
ホ 形容詞は形容詞に対応する
ヘ 平字に対しては仄字が対応する
ト 文法構造が同じ
 ほぼこれほどの条件を満たせば対句が作れる。

3-6 2+2の對杖(對句を儀仗兵に例えて對杖とも云う)

紅塵任地雨晴時,一陣東風払面吹。酒客声声林下路,煌々電燭照花枝。
紅塵+緑影               酒客+流鴬

残紅幾片落花軽,坐聴窓前燕子鳴。歳歳他郷聊託酒,濃春煙景半陰晴。
残紅+散紫               歳歳+年年

明窓一穂月斜臨,去君十年別恨深。回首多年身作客,籬辺切々乱蛩音。
明窓+破壁                          籬辺+葉下

光陰如水酔青春,立志論功驚鬼神。垢面半霜懐往事,偸生拈句老風塵。
           立志+論功    垢面+枯qiong  偸生+拈句

3-7 4+3の對杖
 4と3では文字数に差があって對は出来そうにないが、4+4なら対句が作れる。3文字の方は一文字隠されて居ると思えば其れでよい。ただこの場合前側4文字と後側3文字が並列関係で無いと成り立たない。  

紅塵任地雨晴時,一陣東風払面吹。酒客声声林下路,煌々電燭照花枝。
紅塵任地+○雨如糸(雨は緑雨と思えばよい)

残紅幾片落花軽,坐聴窓前燕子鳴。歳歳他郷聊託酒,濃春煙景半陰晴。
                      歳歳他郷+○年陋巷

明窓一穂月斜臨,去君十年別恨深。回首多年身作客,籬辺切々乱蛩音。
                                 籬辺切々+夜○森々

光陰如水酔青春,    立志論功驚鬼神。
光陰如水+友情○春, 立○志+論○功+驚鬼神

垢面半霜懐往事,偸生拈句老風塵。
           偸○生+拈○句+老風塵 

3-8 句中對の對
 先ず出句に句中對があるとしよう。そうして落句にも句中対があるとしよう。それらは互いには文法構造が違って居ても、落句は出句の対句と成る。この方法は律詩を作る場合にとても便利な方法である。

紅塵任地雨晴時,    一陣東風払面吹。
紅塵任地+○雨如糸   一陣東風+両頬○髭。

紅塵任地雨晴時,    一陣東風払面吹。
紅塵+緑影+雨晴時   柳眼+鴬児+水温涯(雨晴時の対句)

残紅幾片落花軽,     坐聴窓前燕子鳴。
残紅+散紫+落花軽   煎茖+繙書+幼燕鳴。

回首多年身作客,       籬辺切々乱蛩音。
一哭○+三秋○+千里別   籬辺切々+夜○森々

垢面半霜懐往事,     偸生拈句老風塵。
垢面+枯杖+貧活計   偸○生+拈○句+老風塵

3-9 前對の詩
 承句が対句の詩を前對の詩という。
 練習で作った句中対の句を拾い出せば其れで出来る。
                
紅塵任地雨晴時,一陣東風払面吹。酒客声声林下路,煌々電燭照花枝。
紅塵任地雨如糸,一陣東風両頬髭。

                
紅塵任地雨晴時,一陣東風払面吹。酒客声声林下路,煌々電燭照花枝。
紅塵緑影雨晴時,柳眼鴬児水温涯。

光陰如水酔青春,立志論功驚鬼神。垢面半霜懐往事,偸生拈句老風塵。
光陰如水友情春,立志論功驚鬼神。

3-10 後對の詩
 結句が対句の詩を後對の詩と云う。
                                
明窓一穂月斜臨,去君十年別恨深。回首多年身作客,籬辺切々乱蛩音。
                      一哭三秋千里別,籬辺切々夜森々。

光陰如水酔青春,立志論功驚鬼神。垢面半霜懐往事,偸生拈句老風塵。
                      垢面枯杖貧活計,偸生拈句老風塵。

3-11 全對の詩
 承句と結句が対句の詩を全對格と云う。

紅塵任地雨如糸,一陣東風両頬髭。酒客声声林下路,煌々電燭照花枝。
                      酒客流鴬林下路,煌々白白路傍枝。

紅塵緑影雨晴時,柳眼鴬児水温涯。酒客声声林下路,煌々電燭照花枝。
                       吟風信歩林下路,鴬鳴蝶舞路傍枝。

明窓一穂月斜臨,去君十年別恨深。一哭三秋千里別,籬辺切々夜森々。
明窓破壁月斜臨,去君憶君恨更深。

光陰如水酔青春,立志論功驚鬼神。垢面枯杖貧活計,偸生拈句老風塵。
光陰如水友情春,立志論功驚鬼神。

3-12 指摘
 何処をどの様に入れ替えたのかを追跡出来なければ練習教材にはならないので、出来るだけ文字を変えないで辻褄を合わせるようにしたから、大分拙いものが出来た。
 此処でもう一度云わせて貰おう。皮が十分に作れるようになる前に中身を詰めるとパンクするので、呉々も中身を入れないように!
 句の組み合わせ方を述べてきたが、これで整ったとは云えない。先ず注意点として、対句は前句と一体化して仕舞うので、起承転結の配置には其れなりの考慮をしなければ成らない。
 前對格の場合は、起句+承句が一つの句となってしまう。作詩上特段の考慮は不要です。後對格の場合も、転句+結句が一つの句と成って仕舞う。この場合は転句に成るか結句になるかの何れかで、転句になって仕舞えば結句が無くなるし、結句に成って仕舞えば転句が無くなる。
 転句に成って仕舞った場合は結果的に結句が無くなってしまい、結句用にあと一句付け足す事も出来ぬので、転句に成る事は句意を変更するなどして避けなければならない。
 結句に成って仕舞った場合は、転句が無くなるのだがこの場合いは、起句で起承句を担わせ承句に転句を担わせる。これで一応纏まりは付く。
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