漢俳 Home Page   曄歌

数日の努力で簡単に漢俳が作れる講座

Download してお使い下さい

一 序文

 2005年3月23日、中国北京に於いて、漢俳学会が成立した。当然、日本側の当事者は、漢俳の名に由来して日本の俳句団体で有った。

 中国側当事者と日本側当事者は祝辞の中で、漢俳は両国の詩歌文化を繋ぐ橋梁で有って、今後より多くの人々が、この橋梁を使って往来する事を切望する、と謂った。

 漢俳は誕生して已に二十五年余り経つが、この漢俳学会成立を期に、日中文化交流の橋梁として俄に脚光を浴びる事となった。

 漢俳は新たに生まれた定型であるから、未だ日本側にそれのテキストは無い。勿論漢詩詞結社の立場からすれば、テキストを必要とするほどの、難しさは無いものの、余り漢詩詞創作に馴染みのない人にとっては、何某かのテキストは必要であろうと思い、ここに初心者用の簡便安易なテキストを編纂する事とした。


二 編集の趣旨

 この小論は漢俳の入り口を案内するもので、これを読めば漢俳が作れるというものではない。

 漢俳は極めて易しい定型だから、作り方を解説する必要もないが、かと云って、どの様に綴っても良いという事ではない。

 綴る前に漢俳の雰囲気を習得する必要がある。既存の定型ならば模範作品に事欠かないが、新しい定型では品格の整った作品を探す事はとても難しい。

 この小論は、創作の雛形となるべき作品を提示するのが目的である。そして、そこから、既存定型との詩法関係を明らかにする。

 漢俳は二千余体有る漢民族定型詩歌の一つで有って、このテキスト通りの学習を達成すれば、漢俳に限っては独自で創作できる能力を付ける事が出来る様に編集した。


三 学習の前提条件

 このテキストを読むには以下に示す最低限の知識は必要である。
1−白文が読める事。
2−文字面からの解釈が出来る事。
3−文字面の裏にある本義が読み取れる事。

 この三っが出来る事が前提となって、その次に本講の記述に続ける。


四 解説法

 この小講では、白文だけを提示し、敢えて解釈も本義も提示しない。もし、読みや解釈や本義を提示すると、他人に頼る癖が出て、自から読解する能力に弊害が出るからである。


五 漢俳の特徴

 殆どの漢詩詞は起承轉合の四要素に依って構成されているが、漢俳は三句構成のため起承轉合の何れかの要素を欠いている。

 この起承轉合要素の欠落によって、全体として欠落感が生まれる。言い方を変えれば、云い足りない、辻褄が合わない、読者はこの欠落感を補おうとして、探索或いは想像の思考が働く。

 五字句は観念的な表現に適し、七字句は情緒的表現に適しているので、漢俳は五七五字の構成であるので、五字句の特徴と七字句の特徴を併せ持ち、一見情緒的に見えても、内実は極めて高い観念的な境地を創出する事が出来る詩型である。


六 入門の方法

 定型詩歌を作るには、当該定型の様態を知らねばならない。漢詩詞結社では個々の定型について逐一解説をしているが、本小論は漢俳ただ一つであるから、漢俳の詩的な雰囲気を熟知すればよい。

 それには、既存の作品を手許に置いて、ちょっと筆を加える方法を採る事とした。この作業は未だ創作ではない。ちょっとした遊びである。


七 ちょっと筆を加えてみよう!

 皆さんに馴染みの深い既存の作品を十首書き出したので、筆を入れてみてください。これは未だ創作の域では有りません。雰囲気を知るための遊びの域です。

 個々に提示した既存定型は四句構成です。漢俳は三句構成です。四句のうち一句を削り、五七五字句に整えれば、ほぼ漢俳と同じ雰囲気となります。参考までに各首三例を示しましたので、あとは何処を削っても構いません。読者諸賢に任せます。

1−
  楓橋夜外  張継
月落烏啼霜満天,
江楓漁火對愁眠。
姑蘇城外寒山寺,
夜半鐘声到客船。

@−起句を削除
漁火對愁眠。
姑蘇城外寒山寺,
鐘声到客船。

 幾つかの加除を行う
江楓對愁眠。
姑蘇城外寒山寺,鐘声到客船。

解;漁火は江楓の中の景物なので、江楓對愁眠とした。
解;第一句江楓對愁眠と二三句の姑蘇城外寒山寺,鐘声到客船。とは離れている。これは起句の欠落による効果である。

A−承句を削除
月落霜満天。
姑蘇城外寒山寺,
鐘声到客船。

 幾つかの加除を行う
烏啼霜満天。
姑蘇城外寒山寺,鐘声到客船。

解;原句、月落烏啼霜満天は、月落・烏啼・霜満天、の三つの事象より成り立つ句中対で有る。この三事象の中、二三に対して平板の幣をを逃れるのは、烏啼・霜満天の事象である。

B−転句を削除
月落霜満天,
江楓漁火對愁眠。
鐘声到客船。

解;転句が欠けると、三句並立と成り、観点が定まらず趣旨が散漫となる。
解;転句が欠けると、作品として成り立たない。この弊を救う方法は、何れかの句を書き換える必要がある。

B−@ 二句目の変更
月落霜満天,江風停息晩秋眠。
鐘声到客船。

解;楓ではなく風として、江風停息とし、晩秋眠とすれば、
 月落
 霜満 天,
江風停息
晩秋眠
鐘声到 客船。
と互いに連携を保ちながら、一点に収束する。

B−A 三句目の変更
月落霜満天,江楓漁火對愁眠。
鐘声白髪邊。

解;一二句が実句に対して、第三句を虚句として、実を述べて虚で結ぶ。


2−
  江南春   杜牧
千里鶯啼緑映紅,
水村三郭酒旗風。
南朝四百八十寺,
多少楼台烟雨中。

@−起句を削除。
三郭酒旗風。
南朝四百八十寺,
楼台烟雨中。

 幾つかの加除を行う。
千里酒旗風。
南朝四百八十寺,桜花烟雨中。

解;楼台烟雨中よりも季節感のある桜花烟雨中に入れ替え。
解;南朝四百八十寺,桜花烟雨中。の両句は程良く連携を得ているが、千里酒旗風。は連携を得ていない。即ち起句の欠落による結果である。

A−承句を削除。
鶯啼緑映紅。
南朝四百八十寺,
楼台烟雨中。

 幾つかの加除を行う。
千里緑映紅。
南朝四百八十寺,楼台烟雨中。

解;鶯啼緑映紅。楼台烟雨中。の二句とも視点場が一点なので、千里緑映紅。として、視点場を遠方に移し、視点場を遠近二つとした。
解;南朝四百八十寺,楼台烟雨中。の両句は程良く連携を得ているが、千里緑映紅。は連携を得ていない。即ち承句の欠落による結果である。

B−轉句を削除。
鶯啼緑映紅,
水村三郭酒旗風。
楼台烟雨中。

解;転句が欠けると、三句並立と成り、観点が定まらず趣旨が散漫となる。
解;転句が欠けると、作品として成り立たない。この弊を救う方法は、二三句の何れかを書き換える必要がある。

B−@ 二句目の変更
鶯啼緑映紅。
緬想三郭酒旗風,楼台烟雨中。

解;第二句の時間軸を変更した。これにより現在と過去の両時間軸が対比された。即ち内容を転句に書き換えたとも言える。

B−A 三句目の変更
鶯啼緑映紅,水村三郭酒旗風。
模糊烟雨中。

解;第三句の景物を変更した。楼台烟雨中は確実に認識できる景物を指定し、読者の想像を遮断しているが、模糊烟雨中は、認識できない景物を指定し、読者の想像を誘導する。


3−
  答韋丹 僧霊徹
年老心閑無外事,
麻衣草坐亦容身。
相逢盡道休官去,
林下何曽見一人。

@−起句を削除
草坐亦容身。
相逢盡道休官去,
何曽見一人。

 幾つかの加除を行う
年老麻衣身。
相逢盡道休官去,何曽見一人。

解;起句を削除すると前置きに欠け、草坐亦容身では意味不明となる。依って、年老麻衣身とする。「何」は反語を表す。見た事があるだろうか?一度もない!

A−承句を削除
心閑無外事,
相逢盡道休官去,
林下見一人。

 幾つかの加除を行う
心閑無外事。
相逢盡道休官去,林下見道士。

解;承句は削除しても、入り口が有るので、二三句への繋がりは保てる。
解;「事・去・人」の三字の母音(韵)が各々異なるので、その中の二つ以上を同じにする(押韵)必要がある。
 依って此処では取り敢えず「事shi3」に合わせて、見道士・見壮士・見錦字・貪才智などの語彙が充当される。
解;何曽見一人と林下見道士では正反対となるが、この様に趣旨は各様に変えられる。

B−転句を削除
心閑無外事,
麻衣草坐亦容身。
何曽見一人。

解;第一句と二句には繋がりが有るが、第三句とは全く繋がりがない。離れる事は必要だが、離れすぎると、作品として成り立たない。
解;この弊を救う方法は、何れかの句を書き換える必要がある。

B−@ 二句目の変更
心閑無外事,誰説草坐足容身。
何曽見一人。

解;草の敷物が有れば、この身を容れるには足りる、と誰かが説ったが、それを実行したものは、嘗て見た事が有るだろうか?

B−A 三句目の変更
心閑無外事,麻衣草坐亦容身。
未知絶世塵。

解;結句と転句は連携しているが、承句とは連携していない。依って結句を書き換える必要がある。


4−
  秋思  張籍
落陽城裏見秋風,
欲作家書意萬里。
復恐怱怱説不盡,
行人臨發又開封。

@−起句を削除
家書意萬里。
復恐怱怱説不盡,
臨發又開封。

 幾つかの加除を行う
欲寫意萬里。
復恐怱怱説不盡,臨發又開封。

解;起句が欠けると、承句は転句に繋がりにくく成る。依って起句の要素を書き移す。

A−承句を削除
城裏見秋風,
復恐怱怱説不盡,
家書又開封。

 幾つかの加除を行う
客裏見秋風。
復恐怱怱説不盡,家書又開封。

解;承句を削除すると、多少の情報不足は生じるが、全体としてのバランスは崩れない。客裏である事を付け加える。

B−転句を削除
城裏見秋風,
欲作家書意萬里。
臨發又開封。

客裏見秋風。
欲寄家書意萬里,臨發又開封。

解;この作品は承句が虚句で有るから、転句としての代用が可能である。


5−
  秋日過員太祝林園  李渉
望水尋山二里除,
竹林斜到地仙居。
秋光何處堪消日,
玄晏先生満架書。

解;これは用事と云われる作品で、典故が用いられている。「玄晏先生」が典故である。詩題に玄晏先生の語彙を書けば、句中に書かなくとも、趣旨は伝わる。
解;この作品の典故は「比」と言う詩法が用いられていて、典故と対象とを対比させ、対象をより一層顕在化させる詩法である。
解;ご自分の作品に「玄晏先生」典故を用いれば、篤学の蔵書家との趣旨を述べる事が出来る。

@−起句を削除
斜到地仙居。
秋光何處堪消日,
先生満架書。

 幾つかの加除を行う
竹林接仙居。
秋光何處堪消日,玄晏先生書。

解;起句が欠けているので情報不足です。起句の要件を承句に移し、竹林接仙居とする。
解;玄晏先生は蔵書家だから、玄晏先生書とした。

A−承句を削除
望水二里除,
秋光何處堪消日,
玄晏先生書。

 幾つかの加除を行う
望水二里除。
秋光斜處君消日,玄晏先生書。

解;三句バラバラで何を言っているか分からない。
解;秋光斜處君消日として、秋の夕方、君は読書三昧とした。

B−転句を削除
尋山二里除,
竹林斜到地仙居。
玄晏満架書。

 幾つかの加除を行う
尋山二里除,鬱粗竹林接君居。
玄晏満架書。

解;一二句と三句の間には、一読では繋がらない距離感がある。この距離感は読者の探求心に効果的に働き、作者と読者を一体化させる効果がある。漢俳の特徴の一つである。


6−
  焚書坑 韋碣
竹帛烟消帝業虚,
關河空鎖祖龍居。
坑灰未冷山東亂,
劉項元来不読書。
解;この作品は用事と謂われる詩法で、典故が用いられている。劉備と項羽の故事と焚書坑である。

@−起句を削除
空鎖祖龍居。
坑灰未冷山東亂,
元来不読書。

 幾つかの加除を行う
空鎖祖龍居。
坑灰未冷山東亂,劉項不読書。
解;起句が削除されると、前置きの大きく捉えた部分が欠ける事となる。承句は起句の一部を顕在化させる作用がある。
解;合句の元来不読書では訳が分からないので、劉備と項羽を差し込んだ。

A−承句を削除する。
烟消帝業虚,
坑灰未冷山東亂,
元来不読書。

 幾つかの加除を行う。
烟消帝業虚。
坑灰未冷山東亂,劉項不読書。
解;承句が削除されても、全体としての趣は変わらない。ただ、全体としての趣旨の範囲が狭まった事となる。

B−転句を削除する。
烟消帝業虚,
關河空鎖祖龍居。
元来不読書。

 幾つかの加除を行う。
烟消帝業虚,關河空鎖祖龍居。
劉項不読書。
解;關河空鎖祖龍居。と劉項不読書。の間に、距離感があるので、敢えて第二句を変更する必要は無いと想われる。


7−
  秦淮 杜牧
烟籠寒水月籠沙,
夜泊秦淮近酒屋。
商女不知亡國恨,
隔江猶唱後庭歌。

@−起句を削除。
秦淮近酒屋。
商女不知亡國恨,
猶唱後庭歌。

 幾分の加除を行う。
夜泊近酒屋。
商女不知亡國恨,隔江後庭歌。
解;題に秦淮と有るので、二度使いを避けて、夜泊とし、それに合わせて隔江とした。
解;この作品は、用字法と言い、典故として、陳後主作玉樹後庭歌を下敷きにしている。

A−承句を削除
寒水月籠沙,
商女不知亡國恨,
猶唱後庭歌。

 幾分の加除を行う。
烟籠月籠沙。
商女不知亡國恨,猶唱後庭歌。
解;第一句と二三句が離れているので、要件は整っている。

B−合句を削除
寒水籠風韵。
夜泊秦淮近酒屋,不知亡國恨。
解;合句を削除すると、それに代わる句が必要となる。夜泊秦淮近酒屋,不知亡國恨。の二句がそれに当たる。即ち寒水籠風韵。と二意の構成となる。
解;「恨」と同じ韵字にするために「吟」を用いた。


8−
  旅夕 高蟾
風散古陂驚宿雁,
月臨荒戍起啼鴉。
不堪吟断無人見,
時復寒燈落一花。

@−起句を削除
荒戍起啼鴉。
不堪吟断無人見,
寒燈落一花。

 幾分の加除を行う。
古陂起啼鴉。
不堪吟断無人見,時復落一花。
解;起句を省いても承句があるので、さほどの情報不足は感じられない。

A−承句を削除
古陂驚宿雁,
不堪吟断無人見,
寒燈落一花。

 幾分の加除を行う。
風散驚宿雁。
不堪吟断無人見,寒燈照一巻。
解;承句を省いても、起句があるので差ほどの情報不足は感じられない。
解;雁と同韵の巻に入れ替えて合句を変更した。

B−転句を削除
古陂驚宿雁,
月臨荒戍起啼鴉。
寒燈落一花。

 幾分の加除を行う。
古陂驚宿雁,不堪荒戍起啼鴉。
寒燈落一花。
解;転句を削除しますと、厚みが無くなり平板と成って、詩の様態を為しません。
解;第二句の実を虚とします。


9−
  長安作 李渉
宵分獨坐到天明,
又策贏驂信脚行。
毎日除書雖満紙,
不曽聞有介推名。

@−起句を削除
又策贏驂信脚行。
毎日除書雖満紙,
不曽聞有介推名。

 幾分の加除を行う。
贏驂信脚行。
毎日除書雖満紙,聞有介推名。
解;この作品は、用字法と云って典故「介推」を用いている。典故を知る事が前提条件となる。
解;起句から承句へ順調に情報が連結しているので、起句だけでも転合への連結に不都合は生じない。


A−転句を削除
宵分獨坐到天明,
又策贏驂信脚行。
不曽聞有介推名。

 幾分の加除を行う。
獨坐到天明,又策贏驂信脚行。
曽聞介推名。
解;起句が実で承句が虚で、転句の代替としての要件を満たしている。
解;聞有を曽聞に次元を変更した。

B−合句を削除
宵分獨坐到天明,
又策贏驂信脚行。
毎日除書雖満紙,

 幾分の加除を行う。
獨坐到天明。
又策贏驂信脚行。除書雖満紙,
解;合句を省いたので、押韵を何処に行うかの問題がある。
解;一二句で押韻をして敢えて三句を対象から外した。
解;明行共に同韵なので、一二句押韵とした。
解;合句を省くと尻切れ蜻蛉の感は拭えない。これが漢俳の特徴でもある。


10−
  夜雨寄北 李商隠
君問帰期未有期,
巴山夜雨漲秋池。
何當共剪西窗燭,
却話巴山夜雨時。

@−承句を削除
君問帰期未有期,
何當共剪西窗燭,
却話巴山夜雨時。

 幾分の加除を行う。
帰期未有期。
何當共剪西窗燭,却話夜雨時。
解;用字法典故で有る。
解;この作品は、中国人なら誰でも知っている作品である。
解;現在未来と次元の移動が設定されている。
解;この作品は次元移動詩法の典型なので、頭に叩き込む必要がある。

A−転句を削除
君問未有期,巴山夜雨漲秋池。
却話夜雨時。
解;転句は削除されているが、虚実虚の句意が配置されていて、然も巴山夜雨漲秋池。と却話夜雨時。が適度に離れているので、巴山夜雨漲秋池が転句の代替とされている。

B−合句を削除
君問未有期。
巴山夜雨漲秋池。何當西窗燭,
解;末句に押韵していない。漢詩詞を知る者は、次の句が省かれている事を類推する。
解;合句を省くと尻切れ蜻蛉の感は拭えない。これが漢俳の特徴でもある。


八 もう一歩の練習

 第七項に示した定型は筆者の好みで選んだが、今度は読者諸賢の好みで、三〇首を選び出し、自分なりの加除を試みてください。これでやっと百二十回の遊びを経験されました。

 これまでは、創作の前段階です。次項からやっと創作の段階に入ります。


九 漢俳の定型

 詩歌にはそれぞれの規約がある。漢詩詞は規約が難しいと云うが、漢俳は極めて緩やかで無いに等しい。

1−
 句の構成は五字句+七字句+五字句である。

2−
 押韵とは、句末の母音を揃える事を云うが、二句もしくは三句押韵である。

3−
 平韵とは、第一声調と第二声調の母音を云い、仄韵とは第三声調と第四声調の母音を云うが、漢俳は平韵に依る押韵も仄韵に依る押韵も可とします。

4−
 一般には章末押韵が多いが、厳しくはない。

5−
 俳句に倣って「季語」を云う人もいるが、中国国内に於いて季語の定義が定かでないので、現状では、拘る必要は認められない。

6−
 語彙は、古典語彙・文語体語彙・口語体語彙、何れも可である。

7−
 平聲とは、第一声調と第二声調の聲を云い、仄聲とは第三声調と第四声調の聲を云い、漢俳は漢語詩歌であるから、漢語による読みやすさも考慮しなければならない。即ち、平聲三聯・仄聲三聯は避けるべきである。


十 簡単ですから、どしどし作りましょう。

 まず、漢俳の雰囲気を知って、次に構成を知りました。次に約束事を知りました。思ったより易しいのに驚きました。

 あとは第七項の作品例の雰囲気に倣って五七五字で綴ってみましょう。五字句も七字句も、句の中の文字の綴りは、文法に適っていればどの様に綴っても結構です。句の綴り方に工夫をしてみようと思ったら、漢詩詞の解説を参考にしてください。

 多読・多作・多推敲が上達の近道です。これまで述べてきましたが、漢俳と既存の漢詩詞とは、叙事方法が異なり、漢俳固有の方法です。どちらかと言えば、名前の示すとおり「俳句」に近いようです。漢詩詞壇の人は、どちらかと言えば不得手です。俳句詩壇の人の方が適しています。

 多推敲は、俳壇の諸賢にお願いした方が適切な推敲が期待できます。