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漢詩詞創作 句法

 句は詩想を述べる基点である。句が二つ若しくは三つ集まって章と成る。句は概ね一字から九字で構成される。十六字令では一字句が有り、訴裏情など詞には二字句は多い。曄歌は三字句と四字句で、五言絶句は五字句で、六言絶句七言絶句とある。八言句九言句は詞に有る。

 以下は一般に謂われている詩詞句法の一部を示したが、此が全部ではない。このほかにも講を異にして掲載されているので、句法の一部と理解されたい。この講では日本では余り言われない句法の名称と簡単な構成法を説明する。

01-漢詩詞句法総論ほか

 漢詩詞の構成に当たって一般には、韻律と平仄律と、もう一点、文字数の三点がある。韵とは母音を謂い、日本語には母音がアイウエオの五個しか無いが、漢語には、現代韵では十八個、中華新韵では十六個、十三轍には十三個、平水韵では百六個の母音が有る。

  日本語の母音は、漢語の母音に比べて余りにも少ないので、日本の詩歌では漢語詩歌のように、詩詞の要素に母音を規定することは、事実上不可能である。然し幾つかの日本詩歌に母音の要件を組み入れた作品は有るが、此はその作品一点に限ったことで、普遍的な事柄ではない。

 平仄とは音のアクセントを謂い、母音(韵)と子音(聲)で構成されたものを仮に「音」と云えば、日本語の音は、稀に例外はあるが、その殆どが同一周波数で構成されている。

 漢語の音は、第一声調・第二声調・第三声調・第四声調・軽音の五つの形態がある。

 第一声調は、始点と到点が同一の周波数で構成される音を謂い、第二と第四聲調は、始点と到点の二っの周波数の変化で構成される音を謂う。

 第三声調は、始点中点到点の三っの周波数の変化で構成される音を謂う。 軽音は、声調を伴わない短い音を謂う。

 平仄律とはアクセント(平仄)の組み合わせによるリズムを云い、韻律とは、母音(韵)の組み合わせによるリズムを云う。

 音数とは音の数を謂い、音の数とは、詩ならば、五言七言などというように、音の数が規定されている。更に詩では五言句は二音と三音で構成され、七言句は四音と三音で構成される。

 詞の場合は、詩と比べて一句の長さが多様であり、句の中に於いて、音を配分する規定が多々見受けられる。1+4や2+3や1+5等と書かれて居るのは、音の配分規定を表している。たとえば 有新詩 は 有+新詩 と発音される。即ち1+2です。月光新 は 月光 新 と発音され、即ち2+1である。

 音数の規定は、詩では2+3或いは4+3の二通りしかないが、詞に於いては逐一記載できないほど多量に存在する。なお音数律とは音の数の組み合わせによるリズムを云う。

 音とアクセント(平仄)については、日本語の音は一つの子音と一つの母音で構成されますが、漢語は、厳密に見れば一つの子音と一つの母音で構成される音と、複数の子音と母音で構成される音がある。

 漢語の発音は、一つの音として表記されていますが、厳密には複数の聲を一つの音の塊として云われている場合が多々有る。

 この事実は、「注音字母」で発音表記された詞典を視れば一目瞭然で、(アルフアベット綴りの発音表記は、共産党政権に成ってから制定された表記法である。)  循;丁凵勹;Xun

 日本詩歌のリズムについて述べれば、漢民族詩歌には、韵・平仄・音塊数の三要素が有るのに比べて、日本詩歌には、音数の要素ただ一つです。依って日本詩歌には韻律或いは平仄律を云う根拠は存在しない。

 叙事内容と押韻について語られることは少ないが、心の響きは先ず聲によって現され、その聲は、感情によって自ずと類を為す。その聲は文字によって保存される。依って感情と文字は一連を為し、自ずと類を為す。依って韵目と叙事傾向は自ずと類を做のである。類例は次のWave Sightを参照されたい。

 句法の項目は多岐にわたるが、日本では余り言われていない句法を取り上げてみると、虚実とは目に見える物事と目に見えない物事を言い、虚句とは実態のない情を述べる句を言い、実句とは実体有る景物を述べる句を言う。

 孤平は不可と厳しく言われるが、其れを回避する方法がないわけではない。拗救とは、孤平を回避する手法である。

 歩韵とは「歩伐相随」を言い、日本での次韵と同義だが、殆どの中国人は次韵と言わずに歩韵という。

 双關とは詩文の表現方法の一つであるが、この言葉は二つの意味に用いられる。先ず、双関の文章には左右の二行が合わさって一つの纏まった文章となるものがある。この双関は、「論語」などに多く用いられる句法である

 次に、一つの語句が二重の意味を有する語法で、更に此には二つの用法があね、義の双関と音の双関である。

  義の双關 雑詩 沈○期 ○;quan2
聞道黄龍戌,頻年不解兵。可憐閨裏月,常在漢家営。
少婦今春意,良人昨夜情。誰能将旗鼓,一為取龍城。

  音の双關 登高 杜甫
風急天高猿嘯哀,渚清沙白鳥飛迴。無邉落木蕭蕭下,不盡長江滾滾來。
萬里悲秋常成客,百年多病獨登臺。艱難苦恨繁霜鬢,潦倒新停濁酒杯。
lao3 laio3 は路上を流れる水・水溜まり。
lao3 年寄り。

 回文とは日本の回文と同義である。
  廬山途上之作 七言律詩 順讀 筆者作
懐留筆達苦無踪,廟塔晴嵐緑樹叢。堆起雲峯雲靉靉,接來霧澗霧濛濛。
衣沾草露才花白,杖曳泉飛已葉紅。誰寄嚢○詩骨健?危岩磴桟徑重重。

  倒讀
重重徑桟磴岩危,健骨詩○嚢寄誰?紅葉已飛泉曳杖,白花才露草沾衣。
濛濛霧澗霧来接,靉靉雲峯雲起堆。叢樹緑嵐晴塔廟,踪無苦達筆留懐。
○;袋と同義の文字

 視点場とは眼の遣り処を云い、目の前の花器に生けられた薔薇の花を看て、目を上げて窓越しに遠くの山が雪に染まった姿を見る。視点場の移動或いは転換と云える。

臥見古書憂國涙,:机の上  仰看新樹離枝鶯。:窓の外

閑庭屋裏従疎懶,:家の中  陋巷窗前起薄寒。:窓の前

落花任地不留痕,:窓の外  案句憶君憶故園。:机の上

鋤頭蟻子仰蒼穹,:地上   天際飛機見碧空。:空中

 視点場を移すことによって、一つの物事を二方面或いは三方面から照らし出すことが出来、その結果として新たな視点を創出することが出来る。この効果は対杖の目的とするところでもある。

 詩詞の専門家からの詩法だが、当時既に残渣のみで、資料に乏しかったので、聞いたままを転載する。なお「錯綜」の名称は編集上講題が必要なので仮に付けた名称である。

 七言で解説を試みるが、勿論五言の場合は二字減らせば良い。
起句 △○●● ●○◎,承句 ▲●△○ ▲●◎。
転句 ▲●△○ ○●●,合句 △○▲● ●○◎。

 七言絶句の起承転合の各々の句は、四字と三字の構成である。そして、この四字の語彙がお互いに入れ替わる。或いは三字の語彙がお互いに入れ替わる。或いは三字句の一部がお互いに入れ替わる。四字の中の一部が互いに入れ替わる。概ねこの四種類の構成が考えられる。

 錯綜の定義を喚起するに、以下の如き状況がある。格律は正格で有るが曖昧な内容で有る。平凡に過ぎる。何処かに若干の齟齬がある。ところが、字句の有る部分を互いに入れ替えると、格律は拗体に成るが、とたんに説得力有る内容に変身を遂げる。

  久濶会朋(拗体)
久濶会朋數畝園,故郷竹馬念同游。把杯杯映霜髪影,拈句句迷桜花憂。

 合句の「桜花憂」が拙で有る。此を、「桜花」と「霜髪」を入れ替えると。

久濶会朋數畝園,故郷竹馬念同游。把杯杯映桜花影,拈句句迷霜髪憂。

 句の頭の文字、句の中頃の文字の押韵も有って、押韵は句末文字ばかりとは限らないと、中国の詩詞専門家から教わったが、その時既に残渣だけで資料に乏しかったので、此処では記載しない。

 押韵の方式としては、決まった分類法があるわけではないが、概ね六種類在るので、順次作品を交えて解説を為す。但し、一つの方式が単独で用いられる場合と、複数の方式が組み合わされて用いられる場合がある。又、詞や曲では、同じ韵目の平字(陰平聲と陽平聲)と仄字(上聲と去聲)の使用を指定する場合がある。古典に存在した入聲は、現在の普通話には存在しないので、適宜一考を要す。

 隔句韵は、五言絶句や五言律詩や五言古詩などの、五言句の詩歌に用いられることが多い。二句一章の場合、出句には押韵せず落句のみに押韵する。七言句の場合は、初句にも押韵する(打鐵韵)場合が多い。例えば七言絶句の定型では、第一句を押韻するので、打鐵韵と隔句韵の組み合わせと言える。

 排韵は俗称打鐵韵と言い、出句と落句が共に押韻する句法を言う。

 交韵は二句一章の場合出句と出句で押韵し、落句と落句で押韵する方式である。交韵は詩経に見受けられる。

 抱韵は一般に四句一節の場合に、二・三兩句を一・四句で抱く形態である。

 換韵とは、作品内容一括り毎に、韵も平仄も、交互に換える方式である。詩詞定型では、古詩換韵格と言う名称で、この押韵方式が用いられている。

 多字韵は押韵は一字だけで対応するとは限らない。二字で対応する場合もある。

 詞の句法は詩の句法と殆ど同じである。ただ幾つかの定型には「領字格」と言う句法がある。領字は述語で、領字の後に並ぶ語彙は、逗点句点を含めて、韵点まで、総て客語と成る。詞作品鑑賞の場合、領字格を知らぬと、一般構文と見分けが付かず、思わぬ間違いを犯すこととなるので、注意を要す。