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双関概説

 双関は詩文の表現方法の一つであるが、この言葉は二つの意味に用いられる。

1−双関の文章は左右の二行が合わさって初めて一つの纏まった文章となるもの。
注:この双関は、「論語」などに多く用いられる句法でこ此処では省略する。

2−一つの語句が二重の意味を有する語法で、更に此には二つの用法がある。
2−1−義の双関
2−2−音の双関  が有る。


義の双関

雑詩 沈○(人+全)期

聞道黄龍戌,頻年不解兵。
可憐閨裏,常在漢家営。
少婦今春意,良人昨夜情。
誰能将旗鼓,一為取龍城。

「月」の文字は「月」と「少婦(若妻)」の二つの意義を持ち合わせているので、二通りに解釈できる。
可憐閨裏月,常在漢家営。−1
可憐閨裏婦,常在漢家営。−2

1−女性の部屋に差し込む月と、兵営に在る夫を対比させている。
2−一人で居る若妻と、兵営に在る夫を対比させている。

 文字面では、女性の部屋に差し込む「月」と成っているが、外面世界の「月色」は内面世界の「少婦」の意味を併せ持ち、「可憐閨裏婦、常在漢家営」の意味となる。

 

念奴嬌・赤壁懐古 蘇軾

  大江東去、浪陶盡、千古風流人物、故塁西邉、人道是、三国周郎赤壁、乱石崩雲、怒濤裂岸、捲起千堆雪、江山如晝、一時多少豪傑、遙想公瑾当年、少嬌初嫁了、雄姿英発、羽扇綸巾、檣艦灰飛煙滅、故国神游、多情應笑我、早生華髪、人間如夢、一樽還酌江月。

 「大江東去」は外面世界の事柄で、内面的には「時代の推移」を暗にしめしている。注:論語 子罕第九 子在川上曰 逝者如斯夫 不舎昼夜 の語句が有名で、川の流れと時の推移を対比させている。

 

送友人  李白

青山横北郭,白水遶東城。
此地一為別,孤蓬萬里征。
浮雲遊子意,落日故人情。
揮手自茲去,蕭蕭班馬鳴。
  
浮雲とは、定めなく儚い者の喩え。
落日とは、時刻を表示し、物事の後半に在ることの喩え。

 浮き雲と落日という、眼に映る物事を書いてはいるが、その内面は、定めなく儚い現状と行く先の寂しさを詠っている、即ち景を抒して情を述べている。

 文字面の字義と内面の意義を複数持った語彙は沢山あるので、これらを用いることによって、内容を一層深めることが出来る。

 

  窗前緑風
窗前緑緑映蒼穹,白白黄黄昨夜風。
坐想郷閭農事急,方知客裏此歓同。
鶯聲漫漫榴花下,蝶翅匆匆草露中。
卓子茶湯香満椀,茫然注視路邉

 此処に登場する「」は、時間の推移がとても早いことを表している。則ち、桐の葉は晩春に葉を着けるが、まだ熱いうち、まだ人には秋が感じられない中、既に秋風を感じ取って落葉する。自分が思う以上に時間の経過は早い!と云うのである。「階前桐葉已秋風」の用例がある。

 水の流れも、時間の推移と関連付けられる。故事と言えぬ事もないが、出處は論語子罕第十九、子在川上曰、逝者如斯夫、不舎昼夜、・・・・が有る。

 

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