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双関概説
双関は詩文の表現方法の一つであるが、この言葉は二つの意味に用いられる。
1−双関の文章は左右の二行が合わさって初めて一つの纏まった文章となるもの。
注:この双関は、「論語」などに多く用いられる句法でこ此処では省略する。
2−一つの語句が二重の意味を有する語法で、更に此には二つの用法がある。
2−1−義の双関
2−2−音の双関 が有る。
音の双関
懊儂歌 楽府詩集
桐樹不結花,何由得梧wu4子。
梧子は梧桐子の事。梧子は「吾wu2子」に通じさせていて、梧子と吾子とは、音の双関の関係にある。
登高 杜甫
風急天高猿嘯哀,渚清沙白鳥飛迴。
無邉落木蕭蕭下,不盡長江滾滾來。
萬里悲秋常成客,百年多病獨登臺。
艱難苦恨繁霜鬢,潦倒新停濁酒杯。
潦lao3 laio3 は路上を流れる水・水溜まり。
老lao3 年寄り。
梧wu4 吾wu2 潦lao3 laio3 老lao3 の如く同音異義の語彙を用いて、二重の句意を表す手法である。これらの例は、見方によっては「隠語」とも見られる。
中国語は同音異義の語彙が多いので、詞典を頼りに作れば、興味在る作品を簡易に作ることが出来る。
戯題
寒窗展巻惜光陰,任性勉学斜月臨。
誰識清貧詩興疾,還聞夜鳥噪前林。
試みに一句に一文字だけ同音異義の文字を探し出して書き留めてみた。巻・絹juan4 勉・免mian3 隣・臨・琳lin2 詩・屍・虱shi1
など数え上げればきりがない。
寒窗展巻juan4惜光陰,任性勉mian3学斜月臨。
これなら真面目に勉強をする御仁となる。
寒窗展絹juan4惜光陰,任性免mian3学斜月臨。
よい着物にうつつを抜かして勉強をさぼるお嬢さん。
まともに書かれていて、其処から同音異義語を連想させるには聊かの無理があるので、作品の構成上幾分かの技巧を加えなければならない。
寒窗展巻惜光陰,任性勉学斜月臨。
双親担憂懐往事,明眸少女泣霑襟。
真面目に学業に励んで居るお嬢さん。思うに任せぬ事に両親は憂い、少女は心を痛める。
注:文字を入れ替えると
寒窗展絹惜光陰,任性免学斜月臨。
双親担憂懐往事,明眸少女泣霑襟。
フアッションにばかり気をとられる勉強嫌いな娘さん、両親の悩みは絶えない。私たちの若いころは!と、ついぼやく。娘さんは彼氏に振られたのか、隠れて泣く。
注:この作品は、少しばかり転句に工夫を加えた。
転句を「双親嘆息懐往事」とすると、明らかに起承句の「寒窗展巻惜光陰,任性勉学斜月臨」間で齟齬が生じる。おかしい!と感じた読者は、「寒窗展絹惜光陰,任性免学斜月臨」と読み替える。
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