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視点場とは眼の遣り処を云う。
目の前の花器に生けられた薔薇の花を看て、目を上げて窓越しに遠くの山が雪に染まった姿を見る。視点場の移動或いは転換と云える。
臥見古書憂國涙,:机の上
仰看新樹離枝鶯。:窓の外
閑庭屋裏従疎懶,:家の中
陋巷窗前起薄寒。:窓の前
落花任地不留痕,:窓の外
案句憶君憶故園。:机の上
鋤頭蟻子仰蒼穹,:地上
天際飛機見碧宮。:空中
視点場を移すことによって、一つの物事を二方面或いは三方面から照らし出すことが出来、その結果として新たな視点を創出することが出来る。この効果は対杖の目的とするところでもある。
目を何処に移しても良いのだが、一首としては、作者の下に視点を移さなければならない。作者の位置と作品の視点の位置がずれて仕舞うと、歯切れの悪い模糊とした作品になってしまう。
作者の位置とは、机の上でもなければ、窓際でもない。登山の途中でもない。作者の心の中である。
桃源
南窗菊老暁霜繁,凍雀停枝見食喧。
却憶光陰帰一夢,妻呼早飯是桃源。
南窗菊老○○○○;窓の外
暁霜繁○○○○○;窓の外
凍雀停枝○○○○;庭の先のほうの木の枝の上
見食喧○○○○○;雀の心の中
却憶○○○○○○;作者の心の中 住居の中
光陰帰一夢○○○;時空間
妻呼○○○○○○;居宅の台所
早飯是桃源○○○;心の中 住居の中
歸園田居五首 其一 陶淵明
○○○○一部抜粋
方宅十餘畝,陽
草屋八九間。陰 視点場
楡柳蔭後簷,陰 視点場
桃李羅堂前。陽
曖曖遠人村, 遠望
依依墟里煙。
狗吠深巷中,陰
鶏鳴桑樹嶺。陽 中景
戸庭無塵雑,陽
虚室有餘閨B陰 視点場
○○○○以下省略
解説;句には陰陽が有り、視点場から遠望へ、遠望から中景へ、中景から視点場へと、視点を移している。
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