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同義重出不可TopPage

 絶句や律詩では、一首の中で同じ文字を二度以上用いては成らないと謂われている。但し同じ文字と謂うのは日本の漢詩壇での話で、中華詩詞壇では、同義と謂われている。 

 同義重出禁止と謂っても、それには以下の如き要件がある。

1−連珠對(畳字對)と連綿對は、文字を重ねることを要件とした對法であるから、対象外と謂われている。

2−同一句の中での重出は、対象外と謂われている。

3−句を跨いでの重出は、禁止の対象となる。

4 同字重出の規定は日本詩壇独特の謂いで有って、中華詩詞壇では謂わない。

5 中華詩詞壇では「同義重出」で有る。

6 破音字は同字異義の対象となる。

7 同じ字形同じ読みで有っても、意義が異なれば、同義重出とは成らない。

8 同じ文字であっても、使用が有効に作用するならば対象外となる。

註:絶句・律詩に有っては、前項記載の要件は厳しくなり、前項が全部適用されるとは限らない。

 

 同じ文字を幾つも用いた作品

  暁登迎春閣晩    劉駕
未櫛凭欄眺錦城,烟籠萬井二江明。
香風満閣花満樹樹樹梢啼暁鶯。

主旨:未だ櫛も当てない明け方、欄干に凭り掛かって錦城を眺眺めると,・・・・。香風は閣に満ちて花は樹に満ち,樹樹の樹の梢に暁の鶯が啼いています。樹が3つ続けて使われています。

  行宮   元 禾眞7A39
廖落古行花寂寞紅。
白頭女在,閑坐説玄宗。

 

  戯贈沈后   陳后主叔宝
不留?不留也去。
此處不留,自有留處。

 

  憶長安曲   岑参
東望望長安,正値日初出。
長安不可見,喜見長安日。

 

  卜算子    游次公
  風雨來,風雨往。草草杯盤話別離,風雨去。
  泪眼不曽晴,眉黛愁還聚。明日相思莫上楼。楼上多風雨

評:無為に同じ文字或いは同じ意義を複数用いると、内容の膨らみに欠けることがある。新体詩は極度に洗練された詩律であり、文字の最も効率的な使い方として、同義重出不可の規定が出来たのであろう。

 依ってその趣旨を阻害しないならば、重出不可の規約には該当しないと解される。

 

参考:
 行宮では「宮」の字が3回使われています。ところで、これに似通った作品、何処かで見た事が有りませんか?
 そうです。吉野三絶の一つとされる、藤井竹外の吉野懐古です。

 二つの詩を並べて書いてみましょう。
寥落古行宮,   宮花寂寞紅。    白頭宮女在,   闕ソ説玄宗。
古陵松柏吼天○,山寺尋春春寂寥。 眉雪老僧時輟掃,落花深処説南朝。

 この様に並べられると、素人にも一目瞭然。場所と登場人物を入れ替えただけだ。寥落と松柏吼天○は同じ状況表現だ。更に中国では墓に槇柏の木を植えるそうだが、日本にはそんな習慣はない。余計な借り物までしてしまった。

 古行宮とは行幸の時の仮宮、古陵とは高貴な人の墓。宮花寂寞紅とは春ではあるが寂しい景色。山寺尋春春寂寥も春の寂しい景色、あちらは紅と言い、こちらは春と言う。 あちらは白頭宮女なのに此方は眉の白いお坊さん。あちらが説玄宗と言えば此方は説南朝と言う。

 今ならこういう作品を著作権侵害と謂い、盗作とか剽窃とも謂います。とんでも無いところで、藤井竹外先生ボロを出して仕舞いました。

 

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