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八病
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 詩を作るに就いて,声韻の結果によって起こる八つの忌むこと,即ち避けなければならない事が有る。是は,梁の沈約が定めたもので,称して詩の八病と言う。現代の漢詩衰退時には,厳しく戒められないが,一応この様なことが有る,と認識する程度で良いとされている。

 八病とは,(一)平韻。(ニ)上尾。(三)蜂腰。(四)鶴膝。(五)大韻。(六)小韻。(七)正紐。(八)旁韻。

(一)平頭韻。前句の上二字と後句の二字とが同声なものを言う。
良宴会。   今日 良宴の会
難具陳。   歓楽 具陳難し
 この詩は前句の第一字「今」字は後句の第一字「歓」字と同声で,第二字の「日」と「楽」とも同声である。これが,平韻病。

(ニ)上尾病。上句の尾と,下句の尾に同声の字を用いるものを言う。
青青河畔。   青青たる河畔の草
欝欝園中。   欝欝たり園中の柳
西北有高。   西北に高楼有り
上與浮雲。   上には浮雲と齊し
 この詩,「草」と「柳」とは同じく上声。「楼」と「齊」とは同じ平声。これが上尾病。

(三)蜂腰病。両句が各々第二字と第五字とに同声の字を用いるものを言う。
愛我。   君が我を愛し甘を聞く
自修。   竊かに自から修飾せんと欲す
 この詩,「君」と「甘」同じく平声。「欲」と「飾」同じく入声。

(四)鶴膝病。第一句の末と,第三句の末とに同声を用いるものを言う。
客従遠方。   客 遠方より來たる
遺我一書札。   我が一書の札を遺し
上言長相。   上は長しえに相思を言い
下言久離別。   下には久しく離別を言う
 この詩,「來」と「思」とは,ともに平声を用いるものを言う。

(五)大韻病。五言で言えば,一東の韻,ニ冬の韻字を用いる時は,他の九字中に同韻の字を用いるのは悪いと言う。
姫年十五。   胡姫 年十五
春日正当。   春日 正に炉に当るなるべし
風照羅袂。   微風 羅袂を照らす
名月群清。   名月 清輝に群す
 この詩,「胡」と「炉」は七虞の韻,「微」と「輝」とは五微で同韻を用いたもの。

(六)小韻病。本韻を除き,九字の中に同韻を用いるのは悪いと言う。
月。   薄帷 名月を鑒み
我襟。   清風 我が襟を吹く
子已。   客子 已に乖離
遠相送。   那んぞ遠く相送るに宜し
 この詩,「帷」と「吹」は四支の韻,「明」と「清」とは八庚の韻,「子」と「已」とは四紙の韻。「離」と「宜」は四支の韻。

(七)正紐韻。
我本漢家女。   我れ本と漢家の女
來嫁単于庭。   來嫁 単于の庭
 この詩,すでに壬字のあるときは,紙,任、などを用いるのは良くないとする。

(八)旁紐韻。
丈人且安坐。   丈人 且く安坐す
梁陳将欲起。   梁陳 将に起たんと欲すべし
 「丈」と「梁」は共に舌音で発音が近く,すでに牙音の月字があるときは,表字の元,芸,暁,等の字を用いるは不可。

 沈約が定めた声病は余りに酷で,後世の作詩家は之を敬遠した。唯だ参考に資するまでのことで良い。八病の中で上尾病と,鶴膝病は必ず避けるが良いとされている。

 

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