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四傑体

 明代の高○(ヘイ)は、「唐詩品匯」の中で、唐代の詩を初唐・盛唐・中唐・晩唐と四っの時期に分けて、分類するのが良い方法である!と述べている。
 然しこれだけでは各時期の詩人の風格を語ることは出来ない。初唐期の詩体は一般的に唐王朝を建てた高祖の武徳年間(紀元618〜626)より、玄宗の摂政の時期、つまり開元初年(713)まで、即ち紀元七世紀初めから、八世紀初めまでの、およそ百年間を言う。
 四傑とは、唐代初期の王勃・楊炯・蘆照隣・駱賓王の四詩人を指す。彼らの詩風は、皆、齋梁体の影響を受け、詩風も似ている。彼らは五言律詩を試みているし、七言歌行の詩体ね発展させている。この様な新詩体は音韻が美しく響き、言葉遣いもすばらしく、後世に高い評価を受けている。

王 勃
 王 勃(おう ぼつ、650年(永徽元年) ? 676年(上元3年))は中国・唐代初期の詩人。字は子安。「初唐の四傑」の一人。

略伝
 絳州竜門 竜門山西省河津市の出身。祖父の王通は隋末の高名な儒学者で、祖父の弟・王績も詩人として知られた。
 幼くして神童の誉れ高く、664年に朝散郎となり、ついで高宗の子の沛王・李賢の侍読となってその寵を受けたが、諸王の闘鶏を難じた「檄英王鷄文」を書いて出仕を差し止められ、剣南(四川省)に左遷された。?州(河南省霊宝市)の参軍となったときに罪を犯した官奴を匿いきれなくて殺し、除名処分にあった。
 この事件に連座して交趾の令に左遷された父の王福時を訪ねる途中、南海を航行する船から転落して溺死した。著に『王子安集』16巻のほか、民国・羅振玉が編集した『王子安集佚文』1巻と、日本に伝わる佚文として、正倉院の『王勃集残』2巻がある。


 南朝の遺風をのこしながら、盛唐の詩を予感させる新鮮自由な発想が王勃の作品には見られる。二十代の若さでなくなったこの詩人の絶唱として、交趾へ向かう途上に南昌都督が滕王閣で開いた宴会で作ったという「滕王閣序」とその詩(七言古詩)が特に有名である。

  滕王閣
滕王高閣臨江渚,  滕王高閣は江渚に臨む
珮玉鳴鸞罷歌舞。  珮玉鳴鸞 歌舞は罷む
畫棟朝飛南浦雲,  畫棟 朝に飛ぶ南浦の雲
珠簾暮捲西山雨。  珠簾 暮に捲く西山の雨
濶_潭影日悠悠,  濶_潭に影(うつ)りて日に悠悠
物換星移幾度秋。  物換(かわ)り 星移りて幾度の秋
閣中帝子今何在,  閣中の帝子 今何くにか在る
檻外長江空自流。  檻外の長江 空しく自ら流る

  送杜少府之任蜀州唐・王勃
城闕輔三秦,
風烟望五津。
與君離別意,
同是宦遊人。
海内存知己,
天涯若比鄰。
無爲在岐路,
兒女共沾巾。

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王勃先生之図

 

楊炯
  楊炯(ようけい、生年不詳−692年)は中国・唐代初期の詩人。字は不詳。王勃・盧照鄰・駱賓王とともに「初唐の四傑」と称せられる。

略伝
 華陰(陝西省)の出身。幼時から慧敏でよく文章を作り、661年に神童に挙げられ校書郎を授けられた。681年、崇文館学士になった。則天武后の時代に梓州司法参軍に左遷されて、のち盈川の令となった。著に『盈川集』がある。

従軍行
烽火照西京,  烽火は西京を照らし
心中自不平。  心中 自ら平らかならず
牙璋辞鳳闕,  牙璋 鳳闕を辞し
鉄騎繞竜城。  鉄騎竜城を繞(めぐ)る
雪暗凋旗画,  雪暗くして旗画は凋し
風多雑鼓声。  風多くして鼓声みだる
寧為百夫長,  寧ろ百夫の長たらん
勝作一書生。  一書生となるに勝れり


  夜送趙縦
趙氏連城璧,  趙氏連城の璧
由来天下伝。  由来天下に伝う
送君還旧府,   君が旧府に還るを送れば
明月満前川。   明月は前川に満つ

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楊炯先生之図

 

 

盧照鄰
 范陽(河北省)の出身。幼少より曹憲・王義方に従って経史と小学を学び、詩文に巧みであった。初めはケ王府の文書の処理係である典籤となり、王(唐高祖の子・元裕)に重用された。
 のち新都(四川省)の尉となったが病のために職を辞し、河南省具茨の山麓に移住した。病が重くなって、ついに頴水に身を投じて死んだ。
 その詩は厭世的で悲しみいたむ作が多い。長安の繁栄のさまを詠じた「長安古意」が最もよく知られ、『唐詩選』にも収められている。著に『盧昇之集』7巻と『幽憂子』3巻がある。

略伝と詩

  長安古意
長安大道連狹斜,青牛白馬七香車。玉輦縱過主第,金鞭絡繹向侯家。
龍銜寶蓋承朝日,鳳吐流蘇帶○霞。百丈游絲爭繞樹,一群嬌鳥共啼花。
啼花戲蝶千門側,碧樹銀台万種色。複道交窗作合歡,雙闕連甍垂鳳翼。
梁家畫閣天中起,漢帝金莖雲外直。樓前相望不相知,陌上相逢○相識。
借問吹簫向紫煙,曾經學舞度芳年。得成比目何辭死,願作鴛鴦不草蛛B
比目鴛鴦真可早C雙去雙來君不見。生憎帳額○孤鸞,好取開簾帖雙燕。
雙燕雙飛繞畫梁,羅緯翠被鬱金香。片片行雲著○鬢,纖纖初月上鴉○。
鴉○粉白車中出,含嬌含態情非一。妖童寶馬鐵連錢,娼婦盤龍金屈膝。
御史府中烏夜啼,廷尉門前雀欲栖。隱隱朱城臨玉道,遙遙翠○沒金堤。
挾彈飛鷹杜陵北,探丸借客渭橋西。倶邀○客芙蓉劍,共宿娼家桃李蹊。
娼家日暮紫羅裙,清歌一囀口氛○。北堂夜夜人如月,南陌朝朝騎似雲。
南陌北堂連北里,五劇三條控三市。弱柳青槐拂地垂,佳氣紅塵暗天起。
漢代金吾千騎來,翡翠屠蘇鸚鵡杯。羅襦寶帶為君解,燕歌趙舞為君開。
別有豪華稱將相,轉日回天不相讓。意氣由來排灌夫,專權判不容蕭相。
專權意氣本豪雄,青○紫燕坐生風。自言歌舞長千載,自謂驕奢凌五公。
節物風光不相待,桑田碧海須臾改。昔時金階白玉堂,只今唯見青松在。
寂寂寥寥揚子居,年年歳歳一床書。獨有南山桂花發,飛來飛去襲人裾。

長安の大道狹斜に連なり,青牛 白馬 七香車。
玉輦縱 主第に過(よぎ)り,金鞭絡繹(らくれき)として侯家に向かう。
龍は寶蓋を銜(ふく)んで朝日を承け,鳳は流蘇を吐いて?霞を帶ぶ。
百丈の游絲 爭うて樹を繞り,一群の嬌鳥 共に花に啼く。
啼花戲蝶 千門の側らに,碧樹銀台万種の色。
複道交窗 合歡をなし,雙闕連甍 鳳翼を垂る。
梁家の畫閣 天中に起こり,漢帝の金莖 雲外に直し。
樓前に相望んで相知らず,陌上に相逢うてなんぞ相識らん。
借問す 簫を吹いて紫煙に向かい,曾て經て舞を學んで芳年を度(わた)る。
比目と成るを得ば何ぞ死を辭せん,願わくは鴛鴦とならん仙を羨まず。
比目鴛鴦 真に羨むべく,雙去雙來 君見えず。
生憎や帳額 孤鸞を為し,好取す 簾を開いて雙燕を帖するを。
雙燕雙飛 畫梁を繞り,羅緯翠被 鬱金香。
片片たる行雲 鬢に著き,纖纖たる初月 鴉に上る。
鴉粉白 車中より出で、嬌を含み態を含んで情は一つにあらず。
妖童の寶馬 鐵連錢,娼婦の盤龍 金屈膝。
御史の府中 烏夜啼き,廷尉門前 雀は栖(すくわ)んと欲す。
隱隱たる朱城 玉道に臨み,遙遙たる翠?(すいけん)金堤に没す。
彈を挾み鷹を飛ばす杜陵の北,丸を探り客に借す渭橋の西。
倶に邀う客芙蓉の劍,共に宿す娼家桃李の蹊。
娼家日暮 紫羅の裙,清歌一たび囀じて口氛。
北堂夜夜 人月の如く,南陌朝朝騎雲に似たり。
南陌北堂 北里に連なり,五劇三條 三市を控(ひ)く。
弱柳青槐 地を拂って垂れ,佳氣紅塵 天を暗うして起る。
漢代の金吾 千騎來り,翡翠の屠蘇 鸚鵡の杯。
羅襦寶帶 君が為に解き,燕歌趙舞 君が為に開く。
別に豪華の將相と稱する有り,日を轉じ天を回らして相讓らず。
意氣由來 灌夫を排し,專權判して蕭相を容れず。
專權意氣 もと豪雄,青紫燕 坐(いなが)ら風を生ず。
自ら言う歌舞千載に長ずと,自ら謂う驕奢五公を凌ぐと。
節物風光 相待たず,桑田碧海 須臾に改まる。
昔時 金階白玉堂,只今唯見る青松の在るを。
寂寂寥寥 揚子の居,年年歳歳 一床の書。
獨り南山の桂花の發(ひら)く有りて,飛び來り飛び去り人の裾を襲う。

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蘆照隣先生之図

 

 

駱賓王

駱賓王(らくひんおう,640年? - 684年?)は唐代中国の詩人。「初唐の四傑」の一人。

略伝
 ○州義烏(浙江省)の出身。初めから落魄し、好んで博徒と交わり、性格は傲慢・剛直。高宗の末年に長安主簿となり、ついで武后の時に数々の上疏をしたが浙江の臨海丞に左遷される。
 出世の望みを失い、官職を棄てて去った。684年に李敬業が兵を起こすと、その府属となり敬業のために檄文を起草して武后を誹謗、その罪を天下に伝えた。
 武后はその檄を手に入れて読ませ「蛾眉敢えて人に譲らず 孤眉偏に能く主を惑わす」のあたりでは笑っていたが「一杯土未乾、六尺孤安在」の句にいたり愕然としてその作者の名を問い、駱賓王であることを知ると「このような才ある者を流落不遇にしたのは宰相の過ちである」と言ったという。
 敬業の乱が平定された後には、亡命して行方が知れなくなった(一説には誅殺されたとも)。銭塘の霊隠寺に住んでいたという伝説もあり、霊隠寺と題する詩もある。

詩文
 7歳から良く詩を賦し、成長してからは五言律詩にその妙を得た。ことにその「帝京篇」は古今の絶唱とされる。好んで数字を用いて対句をつくるので「算博士」の俗称がある。
 武后は駱賓王の文を重んじ、詔してその文章の数百編を集めて?雲卿に命じ編纂させたのが、『駱丞集』4巻である(『新唐書』『旧唐書』ともに10巻とある)。それに頌・賦・五七言古・五律・排律・絶句・七言絶句・啓・書・叙・雑著の11項目に分かれて、作品が収められている。

  易水送別
此地別燕丹,  此の地燕丹に別れ
壯士髮衝冠。  壮士の髪 冠を衝く
昔時人已沒,  昔時 人已に没し
今日水猶寒。  今日 水猶寒し

 

  霊隠寺
鷲嶺鬱邵嶢,    鷲嶺 鬱として邵嶢
龍宮鎖寂寥。    龍宮 鎖して寂寥
楼看滄海日,    楼は看る 滄海の日
門対浙江湖。    門は対す 浙江の湖
桂子月中落,    桂子は 月中より落ち
天香雲外飄。    天香は雲外に飄る
捫蘿登塔遠,    蘿を捫りて塔に登ること遠く
刳木取泉遥。    木を刳りて泉を取ること遥なり
霜薄花更発,    霜薄くして花更に発し
氷軽葉互凋。    氷軽くして葉互いに凋む
夙齢尚遐異,    夙齢 遐異を尚び
披対滌煩囂。    披対 煩囂を滌ぐ
待入天台路,    天台の路に入るを待って
看余渡石橋。    余の石橋を渡るを看よ

 

  詠鵞
鵝鵝鵝, 曲項向天歌。
白毛浮告,紅掌撥C波。


  初唐四傑の一人。武后の上書して臨海丞に追いやられたが,文明中に武后の罪を責めて「徐敬業の乱」に加わった。武后はその文に「一杯之土未乾,六尺之孤安在」の句があるののに読み至り,心を打たれた。
 このような才人を失った事を惜しんだ。「易水送別」題する詩は武后が唐の帝位を奪ったのを慨して,荊軻の事を詠じた。

  於易水送人   易水に於いて人を送る
此地別燕丹,    此の地 燕丹の別る。
壮士髪衝冠。    壮士の髪冠を衝く
昔時人已没,    昔時の人已に没し
今日水猶寒。    今日 水猶を寒

 

  帝京篇
山河千里国,        山河千里の国 
城闕九重門。        城闕九重の門
不観皇居壯,        皇居の壯なるを観ずんば
安知天子尊。        安んぞ天子の尊きを知らん
皇居帝里○函谷,      皇居 帝里 ?函谷 
鶉野龍山侯甸服。      鶉野 龍山 侯甸服
五緯連影集星纏,     五緯 連影を連ねて星纏に集まる
八水分流横地軸。     八水 流れを分かつて地軸に横たわる
秦塞重関一百ニ,     秦塞の重関は一百ニ 
漢家離宮三十六。     漢家の離宮は三十六
桂殿○岑対玉楼,     桂殿は?岑として玉楼を対せしめ
椒房窈窕連金屋。     椒房は窈窕として金屋を連ねる

三條九陌麗城隈,     三條 九陌 城隈に麗き
万戸千門平旦開。     万戸 千門 平旦に開く
複道斜通○鵲観,     複道斜めに通ず?鵲観
交衢直指鳳凰台。     交衢 直ちに指さす鳳凰台
剣履南宮入,        剣履南宮に入り
簪纓北闕来。        簪纓北闕より来る     
声明冠寰宇,        声明 寰宇に冠たり
文物象昭回。        文物 昭回に象る
鉤陳粛蘭○,        鉤陳 蘭(戸巳)に粛たり
壁沼浮槐市。        壁沼 槐市を浮かぶ
銅羽応風回,        銅羽 風に応じて回り
金茎承露起。        金茎 露を承けて起つ
校文天禄閣,        文を校すは天禄閣
習戦昆明水。        戦いを習はすは昆明水
朱邸抗平台,        朱邸は平台に抗し
黄扉通戚里。        黄扉は戚里に通ず

 

  晩泊江鎮
四運移陰律,    四運は陰律に移り
三翼泛陽功。    三翼は 陽功に泛ぶ
荷香鎖晩夏,    荷の香は晩夏に鎖ざし
菊気入新秋。    菊の気は新秋に入る
夜鳥喧粉○,    夜鳥は粉?に喧しう
宿雁下盧州。    宿雁は盧州に下る
海霧籠辺○,    海霧は辺?に籠り
江風繞戌楼。    江風は戌楼を繞る
轉蓬驚別渚,    轉蓬は驚別渚に驚き
徒橘愴離憂。    徒橘は離憂を愴む
魂飛○陵岸,    魂は?陵の岸に飛び
涙盡洞庭流。    涙は洞庭の流に盡く
振影希鴻陸,    影を振いて鴻陸を希い
逃名謝蟻丘。    名を逃れて蟻丘に謝る
還嗟帝郷遠,    還た帝郷の遠きを嗟き
空望白雲浮。    空しく白雲の浮かぶを望む

 

  剤獄詠蝉
西陸蝉声唱,    西陸に蝉声は唱い
南冠客思侵。    南冠に客思は侵る
那堪玄鬢影,    那んぞ堪えん玄鬢の影
来対白頭吟。    来たり対す白頭吟
露重飛難進,    露は重もくして飛べども進み難く
風多響易沈。    風は多くして響きは沈み易すし
無人信高潔,    人の信に高潔なる無ければ
誰為表予心。    誰が為にか予が心を表さん

 

  詠 懐
少年識事浅,    少年は 事を識ること浅く
不知交道難。    交道の難きを知らず
一言芬若桂,    一言 芬(かおり)は桂の若く
四海臭如蘭。    四海 臭いは蘭の如とす
寳剱思存楚,    寳剱もて 楚を存せんことを思い
金鎚許報韓。    金鎚もて 韓に報いんことを許す
虚心徒有託,    虚心 徒らに託する有るも
循迹諒無端。    迹を循んとすれば 諒に端無し
太息関山険,    関山の険に太息し
吁嗟歳月闌。    歳月の闌ぎたるを吁嗟く
忘機殊会俗,    忘機を忘れて 会俗に殊なり
守拙異懐安。    拙を守りて 懐安に異なる
阮籍空長嘯,    阮籍は空しく長嘯し
劉○独未懽。    劉?は独り未だ懽しまず
十歩庭芳歛,    十歩の庭の芳は歛み
三秋隴月○。    三秋の隴月は?し
槐疎非尽意,    槐は疎なるも意を尽くしたるに非ず
松晩夜凌寒。    松は晩くして 夜に寒さを凌ぐ
悲調弦中急,    悲しき調べは 弦中 急なり
窮愁酔里寛。    窮愁をば酔の里に寛ろうす
莫将流水引,    将に流水引をして
空向俗人弾。    空しく俗人に向いて弾くこと莫かしるむべし

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駱賓王先生之図

 

 

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