漢詩詞諸派○自珍体 中山逍雀漢詩詞創填詞詩余楹聯作講座 TopPageこちらからもお探し下さい

キョウ(U9F94 龍+共 )自珍体

 キョウ自珍は嘉慶が、道光年間の進歩的な思想家である。この時期は、清王朝の衰退期で、政治は一層腐敗し、帝国主義国家が侵略を始め内憂外患は日々に激しくなってきた時期である。彼の詩は一種の革新精神に貫かれ、内容於いて現実生活を表現し、様々な問題を対象にした。そして、当時の社会の腐敗した事実を大胆に批判し、感情も深い。

 形式上では体裁が多様で、技巧に優れ風格も高い。彼の古体詩は気迫雄渾で、近体詩は平易自然である。多くの詩は浪漫主義の精神に富んでいる。彼は清代詩壇上で、最も完成された特色ある詩人の一人である。

  面包謡  注:原作は違う文字だが、未対応の為、同義に代替しました。
  パンの歌

父老一青銭 面包如月圓
 親父さんの頃は一文銭一枚で、パンはまん丸くて月のよう

兒童両青銭 面包大如銭
 今の子供達は一文銭二枚で、パンは一文銭の大きさポッチ

盤中面包貴一銭 天上明月痩一邊
 皿のパンは一文銭より値が高く、空に輝く月は縁が欠けている

噫市中之○兮 天上月 ○;U9915
 ああ町中の食べ物と空の月

吾能料汝二物之盈虚兮
 私にはお前達の満ち欠けが予測できるぞ

二物照我爲過客
 二つが照らす此の私は悠久の時間の流れを過ぎる旅人だが

月語面包 圓者當欠
 月がパンに話し掛ける、丸い物が欠けるのは当たり前

面包月語 循環無極
 パンが月に話し掛ける、巡り巡って何時までも

大如銭 當復如月圓
 一文銭のパンだって、月のまん丸に戻るはず

呼兒語若 后五百歳俾飽而玄孫
 子供を呼んで聞かせよう、五百年后の玄孫にはお腹一杯食べさせよう

解説:
 五百年・・・五百年周期に王や聖人が現れると云う仏教思想に基づき、楽府体の一つで、詰まり民謡形式で、風刺的な意味を持った作品、此の詩も食料の暴騰を比喩し、暗に政策の貧困を嘆く。

 

  西郊落花歌
 西郊落花の歌

出豊宜門一里、
 豊宜門を出て一里の所に、

海棠大十圍者八十九本。
 太さ五尺ばかりの海棠が八十九本もある。

花時車馬太盛、未嘗過也。
 花咲く頃には大勢の花見客が、車馬を繰り出すので、私は嘗って近寄った事がない。

三月二十六日大風。
 三月二十六日には大風が吹いた。

明日風少定 、則偕金禮部應城
 翌日は少し収まった、其れで金禮部応城

汪孝簾潭・朱上舎祖穀
 汪孝簾潭・朱上舎祖穀

家弟自穀出城飲、而有此作。
 弟の自穀と連れだって一杯やり、此の詩が生まれた。

注: 此処までは詩の前置きです

西郊落花天下奇 古来但賦傷春詩
 西郊の落花は天下の奇形であるのに、古来これを詠んだ詩歌は、行く春に対する感傷にとどまる

西郊車馬一朝盡
 西郊を訪れる車馬がぱったりと途絶えた日、

定庵先生沽酒來賞之
 定庵先生は酒を仕込み花見にやってきた

先生探春人不覚 先生送春人又嗤
 先生が春の先駆けを尋ねる時は、別に人が気付く訳でもなく、先生が行く春を送ると聞けば、人はせせら笑うであろう

呼朋亦得三四子 出城失色神皆痴
 友を誘うとそれでも三四人は出来た、扨て場外に繰り出した一同は、皆顔色を変えて呆気に取られた

如銭唐潮夜澎湃 如昆易戦晨披靡
 例えば銭唐口の夜の大潮がゴーッと押し寄せる様であり、昆陽の暁の合戦に軍勢がドッとなびく様である

如八万四千天女洗瞼羆
 又化粧を洗い落とした八万四千の天女が、

斎向此地傾臙脂
 一斉に化粧水をぶちまけた様でもある

奇龍怪鳳愛漂泊
 奇怪な姿をした龍や鳳凰が、かくも浮かれたがると言うのに

琴高鯉何反欲上天為
 琴高の緋鯉が何故昇天の真似事をしたがるのだろう

玉皇宮中空若洗
 玉皇の宮殿は洗い流した様に空っぽだし

三十六界無一青蛾眉
 三十六層の天上界にも、青い蛾眉の美女は一人も残っていない

又如先生平生之優患
 更に例えれば、定庵先生の日頃の憂鬱が昴じ

恍惚怪誕百出難窮期
 夢うつつに様々な異常行為が飛び出し、他人の追跡も想像も許さぬのに似ている

先生讀書盡三藏
 読書が好きな先生は、経律論の三蔵にわたる仏典を極めていられる

最喜維摩巻裏多清詞
 わけても精妙な文章に富む維摩経が気に入り

又聞浄土落花深四寸
 又西方浄土では落花が四寸だと聞き

冥目観想尤神馳
 目を閉じて瞑想し、其のイメージにとりわけ魂も奪われる

西方浄國未可到 下筆綺語何漓漓
 西方浄土には行ける筈は無いのに、どうしてこんな流麗な描写が可能なのであろうか

安得樹有不盡之花更雨新好者
 どうかして一雨毎に新鮮さを増す不断の花が木木に開き

三百六十五日長是落花時
 一年三百六十五日が落花の時で有りたいものだ

 

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