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七言律詩TopPage

 七言律詩は五言律詩より一句の文字数が二文字多いだけで、他に変わったことは有りません。作品の雰囲気は、二文字多いだけで随分と柔らかになって、情緒的になります。そして律詩には仄韵の定格は有りません。

七言律詩平起
○○●●●○◎,    ●●○○●●◎。起聯
●●○○○●●,對仗  ○○●●●○◎。頷聯
○○●●○○●,對仗  ●●○○●●◎。頸聯
●●○○○●●,    ○○●●●○◎。合聯

 絶句では起承転合と謂うのに、律詩では起聯頷聯頸聯合聯と謂う。絶句では起承転合が各一句が対応しているが、律詩では、各二句、即ち各一章が対応している。
 律詩の特徴は、對句の使用が必須な事で、他に目立った相違はない。對の詩法はとても数が多いが、此を簡便に纏めれば、次の如くである。

注:律詩で起承転合を言う人は少ない。云わないからと云って、無いわけではない。作例の様に起承転合を配置すると大過ない作品が出来る。
注:八句の場合は四句に比べて起承転合の配置に融通性がある。

@ 文法構造が同じ
A 色は色で対応する
B 数は数で対応する
C 干支は干支で対応する
D 東西南北は東西南北で対応する

 此処での作例は、眼前に景物があって、それを見た作者が何かを感じ取ったとしよう。その感じ取った心情を眼前の景物を使って表現する方法で作ってみよう。

 ここで陥りやすい事は、景物の描写に主眼が移り、肝心の心情の描写が疎かになる弊である。

作例−1
 窗から数本の牡丹の花木が見える。今年は例年より早く咲いた。牡丹は華麗だが一度雨が降ると散ってしまい僅か数日の命である。目を移せば、妻が植えた山野草が繁茂して淡い臭いの花が咲いている。米粒ほどの白い花である。花の命は長く一ヶ月にも及ぶ。

 さあこれら二つの景から、どんな訴えがあるのでしょうか?

階前的“山野草”和牡丹
○○●●●○◎,●●○○●●◎。起聯 起章
階庭四月養花天,留客酌茶述竝肩。

 起章は全体の様子を簡便に述べます。入り口ですから易しく纏めます。きざはしの庭の四月は、丁度花の盛り,客を留めて茶を飲みながら・・・・・・・・。

●●○○○●●,○○●●●○◎。頷聯 承章
野草千叢香蕊畳,牡丹幾株玉魂眠。

 承章は起章に続けて、主題を登場させます。此処では野草の花はいっぱいに叢れて咲いていると言い,牡丹は未だ蕾の儘で花が咲かないと言っています。

○○●●○○●,●●○○●●◎。頸聯 転章
何恨緑雨唯一日,偏惜紅苞僅數天。

 転章では野草のことは言わずに、牡丹の事だけ語っています。緑盛んなときに降るたった一度の雨が恨めしい,赤い花が数日しか保たないのは惜しい、と言っています。

●●○○○●●,○○●●●○◎。合聯 合章
大胆謙虚還寿命,紛紛狼藉受風旋。

 大胆な花を咲かせる牡丹と、謙虚な花を咲かせる野草と、更に寿命を考えると・・・・,どちらも散ってしまえばそれまで・・・・・。

階前的“山野草”和牡丹
階庭四月養花天,留客酌茶述竝肩。
野草千叢香蕊畳,牡丹幾株玉魂眠。
何恨緑雨唯一日,偏惜紅苞僅數天。
大胆謙虚還寿命,紛紛狼藉受風旋。

2−
 二月の末に静岡県河津に河津桜を見に行った。そのとき桜の苗木二十五本を買い入れた。後日運送屋が配達してくれた。早速に妻と二人で植えた。

 背丈ほどの苗木だが、あと何年経ったら咲くのか?腰が曲がらない内に咲くのか?この歳になると苗木を植えるには、多少の悩みがある。人生というものを考えさせられる。

七言律詩平起
○○●●●○◎,●●○○●●◎。起聯 起章
黎明一路訪芳塵,倒酒偸閑事皆眞。

 明け方に出発して、静岡県河津町へ早咲き櫻を見に行った,櫻花の下で酒を飲み暇をつぶせば、何事も払拭され真実の心となる。

●●○○○●●,○○●●●○◎。頷聯 承章
此刻公園能養老,将来我圃再怡醇。

 この時は公園で、思いっきりエネルギーを注入したが,将来は私の圃で再び酒を楽しみたいものだ。

○○●●○○●,●●○○●●◎。頸聯 転章
植苗灌水青年意,割草施肥白髪身。

 櫻の苗を植え水遣のときは年齢を意識せず若者のようだが,草を刈り肥料を施すのは矢張り年齢を感じさせる。

●●○○○●●,○○●●●○◎。合聯 合章
百歳邯鄲只一夢,紅雲香雪為誰春。

 百年なんてあっという間だが,でも満開の櫻は一体誰のために咲くのだろうか?
 (櫻は成長が早いから十年も経てば花見が出来るが、それにしてもだいぶ先の様な気がする)

払暁訪「河津桜」
黎明一路訪芳塵,倒酒偸閑事皆眞。
此刻公園能養老,将来我圃再怡醇。
植苗灌水青年意,割草施肥白髪身。
百歳邯鄲只一夢,紅雲香雪為誰春。

3-
 編者の家の近くに「吉高の大櫻」と云うヤマザクラの大木がある。五月の六日にもう一度見に行ってみた。四月半ばの花盛りの時は見物人でごった返して居たが、今日は農家の人が下草刈りをしているだけで誰もいない。

 この櫻は天然記念物指定だそうだが、個人の所有だそうだ。三百年間も代々受け継いで来たそうだ。見物客はほんの数時間の見物だが、農家の方は子供の頃からずっと可愛がって来たという。

五月的「吉高之大櫻」

○○●●●○◎,●●○○●●◎。起聯
疇邊坐鎮復芳辰,四月櫻雲人更人。

 畑の端に鎮座して復良い季節になった,四月櫻の花の盛りには人人人。

●●○○○●●,○○●●●○◎。頷聯
游客歓芳誰惜別,農夫割草自成隣。

 観光に来た人は誰が櫻との別れに心惹かれるだろうか?そんな人はいないだろう,農夫は草を刈り隣人の様な関係だ。

○○●●○○●,●●○○●●◎。頸聯
黙聴樹下青青聲,仰見枝頭蒼蒼旻。

 黙って木下で若葉の声を聴き,仰いで枝先の蒼空を見る。

●●○○○●●,○○●●●○◎。合聯
累代慈心三百歳,開花落葉任天眞。

 代々慈しみの心を持って三百年間も,花が開き葉が落ち、みな自然の摂理に任せよう。

註:この作品の意とするところは、自分の都合だけで来る人と、良いときも、そうでないときも、長く付き合ってくれる人人と、・・・・・を云っています。

五月的「吉高之大櫻」
疇邊坐鎮復芳辰,四月櫻雲人更人。
游客歓芳誰惜別,農夫割草自成隣。
黙聴樹下青青聲,仰見枝頭蒼蒼旻。
累代慈心三百歳,開花落葉任天眞。

  七言律詩
  其一
寒窗破壁獨読書,尚友潜心與世疎。閉戸挑燈頻撫手,霜迎檐下逼還舒。
思君託酒吾憐我,意亂胸中盈復虚。想舊添炉眠不就,粉粉飛雪五更初。
  其二
寒空四面雪舗銀,五尺街灯篩玉塵。風吼枝頭燈欲凍,躯凍房里意難申。
青年熱血憂家國,白髪健康役此身。却恨耽奢都市衆,多言袖手慢比隣。

  其三
寒空玉戯白于銀,却賞天花鼓腹民。潜雪盗賊狡猾鼠,浴陽大衆善心人。
應惆欲火亂平穏,最愛憐憫作竝隣。陋屋寒厨歓幸福,莫教金屋臭銭塵。


  其四
紛紛玉屑正霏霏,埋屋推窗掠地飛。雪下竜孫能養體,重重落葉斥寒威。
村郷垂髫将如獣,磴磴危峯似彩衣。菽水之歓誰賞詠,春風解凍雨開幃。

  其五
窗前梅樹捩縦横,老骨繙書慰此情。灼灼枝頭着玉筍,盈盈蕾内育花精。
勿説日日光陰慢,可喜時時韵事成。何處魁春聲緩渡,風痕無影欲逃名。

 

 

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