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詞の創作
 詞の創作は日本では殆ど行われていない。何故ならそのテキストもないし指導者も居ないからであろう。過日提示した作品をもう一度見直してみよう。あとからの作品がいいとは限らないが、何処をどう筆を入れたか対照してみよう。

望海潮 想故郷
籬邊蟲唱,満天星影,映睛一水清漣。
竹馬依然,故園桑海,滔滔歳月成篇。
懐舊對粗箋。
喜幾片欣歓,幾味哀憐。  
難得閑時,偶拈妙語意廻旋。

     ○
青衿日夜加鞭。
忖疎才學拙,習授無銭。
何厭襤褸?何図志業?難忘十六離筵。
案几一燈前。
唯夜思君切,坐恨郷天。
禿筆難成麗句,萬里倚先賢。

望海潮 冬日閑居
踏青兒女,看花酔客,丹情総是童心。
街巷賈商,寒厨活計,浮生半是塵心。
離別亦傷心。
念母父遺訓,親友遺吟。
逸楽悲嗟,前塵往事再難尋?
   ○
頽頭不挿凰簪。
有未衰血性,應低千金。
辞職學文,偸閑案句,明窓豈有煩襟。
寄翰結交深。
憶友君執筆,喜夢知音。
鴎鷺不言國界,懐繞去来今。        鴎鷺不言國界  は對句

 此処で注意することは詩にはない「領字」と言う規定だ!
  “喜忖唯”所謂領字,既在漢語句子中的第一字能単独表示具体意志的字,
也就是説,這一字可以断句。而別処不用,是該詞的格律要求。還有《沁園春》《解連環》《桂林香》《八声甘州》等詞有用領字格。
中国宋朝詩人柳永作的《八声甘州》
対蕭々暮雨灑江天,一番洗清秋。
漸霜風凄緊,關河冷落,残照当楼。
是処紅衰翠減,税苒苒物華休。
   ○
不忍登高臨遠,望故郷渺茫,帰思難収。
嘆年来踪跡,何事苦淹!
想佳人,妝楼?望,誤幾回,天際識奇襲帰舟。
争知我,倚欄干処,正恁疑愁!

律詩の簡単な作り方
 何を創るにもそれなりの方法がある。要領を得た方法を用いると、思いも掛けぬほど楽に出来ることがある。絶句の作れる人でも、律詩は難しい類に入る。それは句意の配置と對杖の難しさにある。 対句の説明を読むと、訳の分からぬ理屈を事細かに並べ立てて、説明を読むだけで頭痛を催し、とても理解までには至らない。もっと簡単に出来る作り方はないのか!?ある!
 対句とは、あちらの句に対してこちらの句を言うので、あちらの句は別段の注意を払う必要は無い。いつも通りに創ればよい。ただ此処で悩まされるのが、平板になる嫌いである。それは七言を例に取れば、最初の句に対して、すぐそのあとに対句を続ける。此を二回続けると一寸気を許すと平板な四句と成りやすい。それを簡単に避ける方法がある。隔句對と言う方法だ!
七言律詩平起 △▲は平仄を変えられるが、孤平や拗救の規約は守らねばならない。
△○ ▲● ●○◎,▲● △○ ▲●◎。▲● △○ ○▲●,△○ ▲● ●○◎。
△○ ▲● △○●,▲● △○ ▲●◎。▲● △○ ○●●,△○ ▲● ●○◎。
 此を一句ごとに並び替えると、
@ △○ ▲● ●○◎,                            
A ▲● △○ ▲●◎。                            
B ▲● △○ ○▲●,                            
C △○ ▲● ●○◎。            この中から頷聯と頸聯を抜き出すと 
D △○ ▲● △○●,            B ▲● △○ ○▲●,      
E ▲● △○ ▲●◎。            C △○ ▲● ●○◎。      
F ▲● △○ ○●●,            D △○ ▲● △○●,      
G △○ ▲● ●○◎。            E ▲● △○ ▲●◎。
となる。一般にBとCが一組で、DとEを一組に作る。だから、C句はB句に追随する形となる。同じくE句はD句に追随する。だから四句とも平板でバラバラにに成りやすい。
 隔句対とはD句をB句に追随させ、E句をC句に追随させる對法である。此ならばそれ程の注意を払わなくとも平板にもバラバラにも成ることはない。
B ▲● △○ ○▲●,C △○ ▲● ●○◎。
冷気 侵肌 知節序   逋霜 破壁 踞寒蛩   B句にDを追随させ、C句にE句を追随させれば次のようになる。即ちD句とE句を対句と言う。追随させるとは同じ文法構造にすると理解した方が好かろう。
D △○ ▲● △○●,E ▲● △○ ▲●◎。
  吟髭 守拙 無功業   患歳 粗箋 寫舊蹤

冷気侵肌知節序,逋霜破壁踞寒蛩。
吟髭守拙無功業,患歳粗箋寫舊蹤。      例題は、頷聯で実景を述べ、頸聯で情懐を述べるように句意を配置した。@句を起こしてA句に続け、@句の意を受けてBC句と続ける。A句の意を受けてDE句と続ける。FG句を結びとする。六ページの律詩の句意配置を参考にして纏めれば、大過ない作品が出来る。応酬の作品に此を利用するときは、先ず先方様の韻文字をそっくり同じ位置に配置して、思いを巡らせながら下の3文字を作る。あとは上の4文字を継ぎ足せば、程々の作品は、さほど時間を要さずとも短時間に出来ること請け合いで有る。

詩歌の応酬
 漢詩を作っていて、さて其れで何をするかと云えば、吟詠家は自作の詩として吟詠するだろうし、書家は墨書作品とするだろう。詩家は、同好機関誌に掲載する。箪笥にしまい込むか声に出すかの違いぐらいで、これらは何れも独り相撲の域を一歩も出て居ない。
詩作品の最も有意義な使い方は、詩歌による応酬で有る。日本の定型詩歌も応酬の話は昔物語に頻見するが、現在では一人相撲の域を出ては居ない。過去の優雅な応酬は一体どうしたと云うのか。
 然し漢詩の世界では、応酬の習慣が現在でも生きている。漢詩に興味がある人という前提だが、(詩歌に興味のない人に書くと嫌味になるの要注意)国内でも国外でも通用する。
 暑中見舞いから、ちょっとした挨拶に漢詩を書くと、決まり切った事を書くよりずっと喜ばれる。双方とも漢詩が作れる同士ならば、普段の手紙のやりとりにも詩歌を一寸差し挟むことが出来る。只ここで注意しておかなければ成らないことは、独り相撲の作品とは多少趣が違ったり、要注意点が有るので提示してみよう。
@ 禁止事項 日本の常識は日本だけのもので、外国でも同じ認識とは限らない。相対関係の事柄は正反対になることが多いので要注意。政治・経済・歴史・人物・思想などは殊に注意を要す。
殊に現在の中国は時代の変わり目と、更に広大な領域に依る地域性や多民族による民族意識の違いなど、思想や価値観が混沌としていて、外国人が云々することは害があって益がない。
A 寄稿の数 先方の煩雑さを考えれば、一首に止めるべきである。如何に秀作でも数が多いと駄作と見なされる。
B 内容 一人相撲の作品とは大分異なる。一人相撲の作品ほど、ほかの者から見て面白くない作品はない。こんな作品を戴いたらウンザリするだけだ。
 まず最初に出す人は、手紙の書き方と同じで、相手に語りかけるように書く。お返しの詩を書くときは、相手の作品を良く読んで、同調し理解を示し、私の主張を付け加える。
C 起承転結 応酬とは限らぬが、起承転結か上手く出来ないと、のんべんだらりと成って、のびきったラーメンの様になってしまう。
弟 今日学校で喧嘩があったんだよ!
姉 うちのクラスにもいつも虐められる子が居るのよね!
父 人間の社会は闘争と淘汰の連続なんだ!
母 でも私たち家族はそんなことのないようにしようね!虐められている子が居たら手を貸してあげましょうね!
 伸びたラーメンに成るのは、弟が全部しゃべったり、姉さんだったり父さんだったり母さんだったり、一人語りや、二人語りに成った作品に多い。
D 折り込み 折り込み都々逸ならぬ、折り込みの漢詩がある。蔵頭詩と云い、中国詩友の作品2首を例として示そう。 中国山東省陳振國作 
賛《中国石油画報》 石油滾々沃中華,油海滔々映彩霞。画出篇篇鉄人志,報来雑雑大慶花。  
 贈《一衣帯水》 一展扶桑画,衣香満壁間。帯心東島去,水壁浸藍天。
 何れの作品にしろ、彼の作品の中では秀作とは言えない無理がある。相手の名前を句の第一字目に織り込んで作詩する方法だが、中国人でも思いに委せない点があるのだから、日本人の場合は、5字句の詩は止めた方がよい。
織り込むと云うことは必然的に句意に関わりなく無理矢理押し込む事となる。結果何がなんだか分からぬ作品が出来る。どうしても織り込みたいのなら7字句の詩にした方がよい。そうすれば2字が不穏当でも、残りの5字でどうやら辻褄を合わせられる。
E 作品の善し悪し 一概には言えぬが、誰が読んでも読めて、すぐに意味が分かること。説明を必要とする作品や、一読不理解の作品は一人相撲の類と言えるから、箪笥に仕舞っておくなら良いが、表に出すのは止めた方がよい。
漢詩に全く興味のない伴侶に読んで貰ってOKが出たら合格だ!
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