漢詩詞叙事 興 中山逍雀漢詩詞填詞詩余楹聯創作講座こちらからもお探し下さい

TopPage

 目的とする物事を表現する手段には「賦比興の三っの方法が有る。「興」とは物事の主体を他のものに置き換えて表現する詩法、即ち仮借で有る。

 詩経(一名毛詩とも言う)は四部に分けられ、国風・大雅・小雅・頌があり、国風は大部分が人民の中で詠われていた歌で、他の大雅・小雅・頌は王室関係の歌で、宮廷内の知識人によって作られ、周王朝創業を述べる英雄叙事詩である。
 国風の殆どは叙情詩で、純朴な内容である。内容によって大別すれば、風・雅・頌の三っに大別され、これらの合計は三百十五篇である。
 猶、これらの修辞法は、賦・比・興の三っに分類され、風・雅・頌・賦・比・興の六っを合わせて、詩の六義と言われている。作詞の詩法としては、修辞法の、賦・比・興の三っが対象となる。

 興とは、対象を他の物事に置き換えて表現する比喩である。

  我家之花猫
花猫吃飽一何安,   三毛猫は腹一杯になると、其れで充分
天下太平似去官。 天下太平で、仕事を怠ける
只恐偽装猾老鼠, 只恐ろしいのは、よい子面したずるい鼠
貧家米櫃保粮難。 米櫃を食い散らかされそう

猫;腹一杯になると仕事もしないが、それ以上の欲は出さない。
鼠;幾ら食べても際限がない。
解:十分な待遇があると、怠け者になる。目を離すと盗み食いをするものまで現れる。

 

  蟻軍襲青虫 東京都 石倉鮟鱇

童心殘酷抓青虫,  生死を弁えぬ残酷な童心。即ち「力は正義なり」が罷り通る現代の国際情勢を謂う

投与蟻軍前進中。  青虫を蟻の群れに放り出す。敢えて危険な目に遭わせても、頓着しない。

一命可憐翻滾處,  命がけでもがき苦しむ。

紫陽花發晝無風。  目の前に、こんなにも残虐なことが行われているのに、周囲は無関心。

解:この作品は、童子の何気ない行いを通して、現在の国際情勢を的確に炙り出している。

評:普段何気なく見慣れている光景を描くことによって、実情を叙すよりも、却って痛烈に訴えることが出来る。

 

漢俳漢歌自由詩散曲元曲楹聯漢詩笠翁対韻羊角対填詞詩余曄歌坤歌偲歌瀛歌三連五七律はこの講座にあります