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詩詞の性描写TpPage

 筆者は嘗て性描写の作品を作ったことが有る。だがその余りの難しさに挫折して仕舞った。

 何故難しいかと云うと、人生は日常の衣食住の中にあるが、其の上位に位地するものが有る。生まれることと死ぬことである。更にもう一つ上がある。生殖で有る。順序を示して見れば、

生殖
生誕
衣食住
死滅
の順である。

 インパクトの強さから云えば、1−生殖 2−死滅 3−生誕 4−衣食住の順位である。この生殖は生物の本能の部分であるから、その感情は他の要件に比べ群を抜いて強烈である。即ち他の3件は心の躍動であるが、生殖は心と肉体の躍動である。

 作詩の問題点から論を進めると、詩詞の本旨は自己深情の発露で有る。

 叙事法には、賦比興の三法が有る。着せ替え人形の様な構造になっていて、叙事は着物に相当する。

 インパクトの弱い着物を着せれば、中身が着物に負けることはない。だから多くの作品が、最も創りやすい衣食住に片寄っている所以である。

 インパクトが強ければ、其れに対応し得るだけ中身を強くしないと、着物に負けて仕舞う。そして負けて仕舞うと、着物の印象だけが残って、中身の印象が残らずに、作者の本旨が全く伝わらない結果となる。

 生殖は生物の根本を為す日常行為で、更に最も神聖で、決して淫乱でも無ければ非道な行為でもない。ただ生物の本能の部分であるから、精神と肉体の両方の躍動を伴うので、其のインパクトは極めて強い。

 だから作者の側にこの強烈さに対応出来るだけの、自己深情の表現手段を持ち合わせて居ないと、単なる性描写と成って仕舞う。

 もう一点、これは作者の側の問題では無いが、読者の讀解力の無さを勘定に入れなければならない。

 例え平易な作品であっても、その観賞は表面的で、言い換えれば人形の、着物の観賞に滞まって、中身まで観賞の眼が届かない例がとても多い。

 ましてや性描写の作品となると、其のインパクトが強いので、如何に錬磨された表現手段を用いたとしても、99.9パーセントの読者に歪曲され、淫乱の謗りを受ける。

 だから性描写の作品は格段に難しく、誰云うとなくあれこれ理由を付けて、なかなか作る者が居ない。
(参考までに、筆者は家畜人工受精師をして居た事がある)

 

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