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平仄不要論に一言TpPage

 漢詩の創作に関わる諸氏の間で、平仄や韻に付いてあれこれと論議があるので、此処で一論を提示してみよう。
 其れには先ず幾つかの設問を用意し、其れを拠り所に筆を進めようと思う。

1−国際交流をしますか?国際交流をしませんか?
 この設問の答えによって、方向は大いに異なります。国際交流をするのでしたら、国際的に通用する方法を講じなければなりません。

 平仄や韻など格律の要件は、本家本元の中国詩詞壇の見解に添う様にするのは最低限のルールです。
 国際交流をしないのでしたら、日本国内で通用するか否かの問題があります。日本国内で通用させるには、国内詩詞壇の見解に沿う様にすることは最低限のルールです。然し日本詩詞壇の見解は、中國の其れよりも平仄や韻について一段の厳しさがあります。

 日本詩詞壇での通用に頓着しないと云うのでしたら、其れは日本で云う所の定型詩歌の埒外ですから、どの様に作ろうとも全く自由です。どの様にお作りになろうと其れは貴方のご勝手ですから、ご自由になさるのが宜しいでしょう。然し、我流作品は、格段の力作で無い限り、何処にも通用しないと云うことを覚悟しなければ成りません。

 此処で、形式よりも作品の内容が勝負だろう!と云われる方が居られます。其れは尤もなご意見です。然しそれは、云うは易く行うは難しで、日本人の作品の中で、格律無視を乗り越えても評価される作品が一体何首あるのでしょうか?

2−漢詩は中国詩歌ですか?日本詩歌ですか?
 漢詩は日本人も作る事は出来るが、矢張り中国詩歌だと思っています!

 前項に引き続きますが、この場合中国詩歌なら、中国詩詞壇の見解に添う事は当然のことです。

 先ず平水韻と中華新韻に付いて述べましょう。前提条件として、中國の領域は広大で、文字と字義は殆ど同じにしても発音は一様ではない事と、海外架橋が多く、日常は現地語を用いながら、漢字で詩歌を作ると云う事が現実に行われていると云う事を擧げておきます。

 平水韻は古典韻で皇帝の権威によって流布されたものですが、其の当時でも全領域での整合性は無かったで有ろう事は想像に難く有りません。

 近年編纂された中華新韻は、普通話を基準に編纂したという話ですが、其れとても広大な中國全領域での整合性は得られないで有ろう事は、想像に難くありません。

 中華新韻であっても、架橋や方言(普通話に対して)の地域では、平仄や韻に対して日本人の感覚とさほど変わらぬ状況にあります。なお近日中華詩詞学会は中華新韻を正式に認証したとの話です。付け加えて述べれば、中華新韻は平水韻よりも韻文類を少なくし、平仄は普通話の声調に合致させて有ります。中華新韻については小生のページを参照して下さい。

3−日本人の作る漢詩は、日本人独特のものである!
 このご意見の方には、日本人には平仄や韻が文字面でしか判らないのだから不要だ!と云う人が多いようです。このご意見の方は、国際交流には、もとより対象外となります。もし仮に国際交流を試みられるならば、隣の家に行って、自分の都合ばかりを云っている事と同じで、体裁良くあしらはれる事となります。

 確かに日本人の作る漢詩は、日本独特のものの様です。其れは格律云々ではありません。叙事法と内容についてです。

 先ず叙事法から云えば、日本詩歌と中国詩歌の叙事法は異なるにも関わらず、日本人の作った漢詩は、日本詩歌叙事法の延長上に有るようです。内容について云えば、日本人の作品は独白体が殆どで、中国人の作品は殆どの作品に相手が居ます。それは国家であったり社会であったり、家属や友人、妻や子、自分との対話です。

4−中国人の作品にも格律不備が有るではないか!
 格律不備の作例として、中国人の作品を擧げる人が居ますが、日本人が知って居る格律に対する知識は、中国人の持ち合わせて居る知識に比べ、ほんの一部の要素でしか有りません。この事を前程にすれば、中国人の作品を日本人が類例に提示することは妥当ではありません。これは小学生が自分の尺度で大学生を云々することと同じです。

5−平仄や韻についての現実的な対応。
 次に、格律に100パーセント合致しなければ成らないのかと云えば、前項に於いて説明したとおり、格律そのものが、平水韻にせよ現代韻にせよ全領域に於いての整合性を保持していないと云う現実がある。更に中國本土に於いても古典韻を用いている人と、新韻を用いて居る人とが混在しています。

 この現状に鑑み、臨機応変の対処は容認されると見るべきです。然し其れは格律を破ったことを承知している場合に限られ、疎かに取り扱った場合とは天地ほどの開きのあることを承知すべきです。

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