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日本と中国の作品比較TpPage
漢詩詞の凡作と佳作

日本の漢詩詞作品と中華の漢詩詞作品の現状

 中華詩詞壇の同人誌はしょっちゅう目にしているが、高い頻度で佳作に出会う。それとは対照的に、日本人の作品は過去現代と通観しても、その殆どは凡作で、佳作に出会う頻度は決して高いとは言えない。

 中華詩詞壇の会員は自国語だが、日本人は外国語というハンデの有るものの、其れよりも作品の巧拙を決めるのは内容であって、技巧の巧拙はそれ程の要件とは成らない。

 

漢詩詞成立の基礎

 生きて居る人間には、大まかに四っの要件がある。

 第一に生物としての本能である。即ち異性への関心で、これが欠けたならば人はこの地球上に存在しない。

 第二の要件は衣食住で有る。衣食住には当然として社会的な事柄も含まれ、この要件が欠ければ人は生きてはゆけない。

 第三の要件は心の問題である。繁殖と衣食住が足りると、次に自己に対する内面的な心の問題が浮上する。

 第四の要件も心の問題である。自己に対する内面的な心の問題の次に、他者に対する心の問題が浮上する。

 以上の四要件は独立して存在するのではなくて、渾然一体となって人格を形成する。只それらを判り良くするために分別して記述した。

 以上の四項目の要件を更に簡便に標記し、詩詞創作に関わる事柄を述べれば・・・・

1−異性に対する関心

  人は変質者でない限り、年齢に関わらず誰でも本能として異性に対する関心を持っている。

2−衣食住と社会

  人の生命を維持するのは衣食住である。満腹と空腹、富裕と貧困などが有り、人は集団で生活するので社会性も多多ある。

3−自己の内面的な心の問題

  人以外の動物が自己の内面を思考するか否かは知らないが、人は自分の頭脳で自己の内面を観察することが出来る。納得や反省、閑適や塵俗など、多多ある。

4−他者に対する心の問題

  人は他者に対して思いを馳せる事がある。他者に対して誠実と虚偽など多多ある。

 

 また、視点を変えて前述四要件を見ると、異性に対する関心と衣食住は、具体性のある事柄である。詩詞で言う「実」の範疇に入る。

 次に自己の内面心理と他者に対する心の対応は、詩詞で言う「虚」の範疇に入る。

 

 人格は、前述四要件に依って成り立っている。然し人はそれらを自覚しているかと言えば、殆どの人は自覚していない。

 普段の生活をする上では自覚する必要はあまりないが、漢詩詞は全人格の基礎の上に成り立つ詩歌であるから、其れを創作する場合には、それらを自覚しなければ成らない。即ち「実」と「虚」を自覚することが必要となる。

 言い換えれば、漢詩詞は「実」として二つの基礎と、「虚」として二つの基礎の、四つの基礎の上に立つ四本柱の塔と言る。四つの基礎が堅固で然も等間隔に配置されていないと、四本柱の塔は安定して建つことは出来ない。

 

 日本の漢詩詞作品

 日本の漢詩詞作品の大半は自己の内面と他者に対する心の問題を基礎として、衣食住と異性への関心は少ない。即ち「虚」が主体で「実」が少ない極めて不安定な基礎の上に建っている。依って生活実感に乏しい空虚な作品が多い。

 それに引き替え、中国詩詞壇の作品は虚実相俟って安定した基礎の上に建っている。依って生活実感と心の問題が渾然一体と成った充実した作品が多い。

 

解決法

 日本漢詩詞壇作品の現状を理解し、其れを解決すべく努力する以外に方法はない。

 この事を言うと殆どの人は、知識の不足を訴えるが、作品に反映されないのは知識の不足が原因ではない。日々の生活に於いてそれらを読み取る感覚の不足である。其れを解決する手段は本人以外に誰にも出来ない。

 読み取る感覚を養う手段として、個別要件に限定した作品を作ることである。作品が出来ないことは、詩法知識の不足ではなく、ご本人の感覚不足が原因である。

 効率的な養成手段として、新短詩の創作を勧める。新短詩は極めて易しいから、詩法の云々は理由には成らない。もし出来なければ、それは詩歌の問題ではなく、人としての感覚の問題である。

 

漢詩詞を構成する四本の柱

異性への関心

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他者への関心■-------------------自己内面の関心
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衣食住・社会

■ 中国人の作品は柱四本の均整がとれている

□ 日本人の作品は心理面に重く、人間臭さに乏しい

 

 

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